26 / 92

第26話

誠の手が、僕の頬に触れる そこに再び、涙が流れた 「……偶然、悠に会ったんです」 誠の指が、ぴくりと反応した 「……あの日の僕は 気持ちが、グラグラしていて 淋しくて…苦しくて……」 声が震えてしまう すぐそこに、別れが来てしまっているのを感じ 足先が冷えていくのを感じた 気付けば誠を掴み、掴まれた手も震える 「………悠と…」 そこまで口にした瞬間 誠の手が緩んだ 「………」 シートに体が戻される 当然の結果だけれど 離された事に胸が深く抉られる 全身の力が抜け落ち シートに身を預けた 誠を疑いながら それを自身がしてしまっている事実を思えば 嫌われて、当然だ 「……僕の事、……軽蔑…しました、よね……」 「………」 「……ごめんなさい…」 顔向け出来ず 僕は窓辺りをぼんやりと眺めた 何処だか解らない暗い場所…… 窓の外に広がる闇は 今の僕と誠を映し出している様だった 誠の深い溜め息が聞こえた 「……きっかけは、僕です 僕ですけど……」 苦しそうな誠の声 「…………」 「………」 息をしたら壊れてしまいそうな程 二人の間を取り巻く空気は脆く、危うい 僕は乱れそうになる呼吸を押し殺し 未だ溢れてしまう涙を静かに拭った

ともだちにシェアしよう!