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第28話
諦めようと、潔く身を引こうとする誠に
僕の心にぽっかりと大きな穴が空いた様だった
悠の時の様な強引さを、何処かで求めていた
うずうずとした気持ちが広がり
両手を握った手に力が籠る
「……だったら、拐ってください…
引かないでください…
好きなら、僕を奪い返してください……」
僕の言葉に、誠の目が見開く
そしてそのまま僕の方を向いた
「…悪い事した僕を
叱ってください……
……かっこ良く引くなんて、ズルイです
そんな事されたら……僕は…
……後戻り、できなく…」
涙の雫がポロポロと手の甲に落ちる
言い切らないうちに、誠の手が伸び
僕の体を抱き掬う
「……双葉」
強く抱き締められ、耳元で囁かれる
「…そんなに僕を
煽らないでください」
僕を抱き締めた手が
頬に添えられる
そして、眉根を寄せ潤む瞳が僕を捉えた
「本音を言えば
悔しくて、堪らない……
…双葉が他の男に、触られたかと思うと……」
その親指が、僕の涙を拭う
「嫉妬で狂いそうです」
指がするりと下り
僕の横髪をさらりと掻き分けると
悠の付けたマーキングが露になる
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