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第33話
…悠…
「……」
悠の事だから、きっと開けなければドア前で待つかもしれない……
三ヶ月前の悠を思い出し、僕は玄関のドアを開けた
瞬間、潮風の様な悠の匂いがふわりと鼻を纏う
肌を重ねてしまったあの温もりが思い出され
それから避けようと、視線を外す
「双葉!
……って、どうしたんだよそれ」
「うん、……変な顔だよね…」
腫れた瞼のまま、目線を合わせず笑顔を作る
「…何言ってんだよ!何かあったのか?!」
悠の眉根が寄せられる
両肩を掴まれると、張り付けた笑顔は簡単に外れてしまう……
「待て、……双葉、コレ」
「………」
顔を逸らした瞬間、悠が僕の一点に視線を注ぐ
「まさか、あの変態野郎が…」
「違うの……違う」
小さく頭を振った
「……じゃあ」
「誠さん、……だから…」
そう答えると、悠の溜め息が聞こえた
ぎゅう、と悠の手に力が籠る
「……もしかして、乱暴にされた…のか?」
悠の言葉に、小さく頭を振る
「…じゃあ、何でそんなに泣き腫らしてんだよ」
「………」
堪えようとしてる、のに……
腫れた瞼から涙が零れ落ちる
それを拭おうと手を添えると
その手首を悠が掴んだ
「……擦んな、もっと腫れんぞ!」
顔を上げると、眉根を寄せ僕の腫れた目を真剣に見る悠の顔が、直ぐそこにあった
「こっちこい」
腕を強く引っ張られる
そして連れて来られた場所は
浴室の前だった
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