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第34話
悠が浴室のドアを開ける
湯船にはもう充分お湯が張られ、湯気が立ち込めていた
「お、準備できてんじゃん」
蛇口を閉めると、悠は振り返っていつもの顔を見せる
「一緒に入るか!」
「……え」
「腫れ、治してやるから」
「………」
悠は自身の目を差して、僕に八重歯を見せた
狭い浴槽に
やっぱり二人は、きつい……
悠の胸に背を付け、収まるように小さく縮こまる
成り行き上、というよりも
抗おうにもその気力がなかった、という方が適切だ
折り曲げた膝を抱えていると
悠にギュッと抱き締められた
「………」
匂い、感触……
誠とは違うそれを感じると
罪悪感ともとれない複雑な感情が襲う
「……向き合おうと思ったの、誠さんと」
そうぽつりと言うと、悠の体がぴくっと反応した
「誠さんの傍にね、とても積極的で可愛らしい人がいて
二人はお似合いなの……僕の入る余地なんてないくらい……
……それから暫く、誠さんと連絡取れなくなっちゃって
不安で堪らなくて
どうにかなっちゃいそうで……」
そこまで言って、首を竦め首筋に触れる
「悠と会った夜、誠さんから連絡が入ってて……昨日、誠さんと会ったの
……僕が心配する様な事はないって
そう言われた、……んだけど……」
「………」
「僕はそうじゃなかったから……
ちゃんと話さなくちゃって、思って……
……でも、嫌だよね……そんな事言われたら……」
悠の腕に力が籠められる
「確かに、いい気はしねぇよ
他の男と、なんて想像したくねぇし…
でも、隠されて後で知るよりは全然いいと思うぜ」
悠の言葉が、心に沁みる
「…って、俺が言うのも変だけどな
……でも、双葉に寂しい思いをさせたソイツがそもそもの原因だろ?
双葉を本気で思ってるなら
あんな状態になるまで放っとくかよ!」
……悠…
畳んだ膝をギュッと掴む
確かに……
悠とつきあっていた時は
そんな思い、全然しなかった……
悠は女の子にモテない訳じゃなかったから
最初は不安だったけど
そうなる前に、悠がそれを吹き消してくれてた
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