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第35話

「……ゆう」 悠の手が、僕の鎖骨に触れる そこは、昨夜誠に付けられた痕がくっきりとあった 「なぁ双葉… 俺、本気でお前を奪っていいか?」 「え……」 悠に強く抱き締められる 膝を抱えた僕の手の甲に悠の手が重なり、僕の肩口に悠の顎が載せられる 「……双葉、愛してる…」 耳元で囁かれ、僕の心臓が跳ねる 悠の指が僕の指を絡め、ギュッと握った 悠と顔を合わせる 僕の頬に触れた悠の指先 触れると同時に顔を寄せ、まだ腫れの残る僕の瞼に唇を当てた そして悠の手がそのまま僕の横髪をすくと、唇を離して僕に熱い瞳を向けた 「…ダメ……まだ、僕は…」 「わかってる」 そう言いながら、悠は僕に八重歯を見せる その悪戯っぽい笑顔に気をとられ、悠に抱き締められた事に直ぐ気付かなかった 「…けど、ちょっとやべぇ…かな」 浴室を出てまだ何も纏っていない状態の為、僕は悠を押し戻そうとする 「…だ、ダメ……」 「わかってるって…… ……だから、ちょっとだけこのまま……」 どくん、どくん…… 悠の体温と、匂い それに肌の感触が、心地いい ……だめ…、僕には……… そう思っているのに、その温もりから離れられなくなっている 悠の胸や指先、息づかいから、規則的な鼓動や熱を感じ それに僕の心音や呼吸がゆっくり合わさってゆく…… 「………」 あんなに苦しくて重たかった気持ちが すぅっ、と軽くなっていくのを感じた 僕の手が、おずおずと悠の背中に回り 悠をギュッと抱き締める ……いけない事はわかってる でも、もう少しだけこのまま…… 瞼を閉じて悠の温もりを感じる 背中に回された悠の手のひらは熱くて、暖かい……

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