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第38話

その手のまま店内を回る 付き合ってた頃と変わらない…… 悠の熱が手のひらを伝わり、心臓が早鐘を打つ その熱がまた僕の手のひらに集まり、繋がれたそこが熱く湿気を帯びる そのしっとりとした肌と肌の触れ合いは 再会して肌を重ねたあの夜よりも 深く繋がっている様に感じた 「そろそろ時間だな」 時計を見た悠が呟く もう悠と離れるのかと思ったら、寂しくて胸がギュッと締め付けられた 繋がった手のひらは熱いのに 心がどんどん冷えていく…… ……もう少し、このまま…… 「俺もそろそろバイトいかねーとだし」 「………」 「双葉?」 繋がった手に力を籠める 「……悠、ありがと なんかね……楽しかった……」 本当は、悠に飛び込んでしまいたい… 入浴後にされた様に 肌と肌を合わせてその温もりにしがみつきたい…… …でもそんなの許されない 僕は悠を見捨てて、誠さんを選んだのだから…… 例え悠が良くても 悠を支えてきた大輝や響子さん そして何より誠さんを 傷つけたり裏切る行為になるから…… 笑顔を向けた後、唇を真一文に引き結ぶ 悠が僕の正面に立ち 繋がれた方とは反対の手が 僕の右頬に触れた と同時に顔を寄せられ 気付けば唇を奪われていた…… それはほんの2、3秒…… 直ぐに離れると、悠の唇が僕の耳元に寄せられる 「んな顔すんなよ…」 頬に触れた手が、僕の後頭部に回りそっと髪を撫でる 握られた手は 熱と湿気を帯びたままだ 「……ゆ、…ん…っ」 名前を呼ぼうとして、唇で塞がれる ゲーセンの片隅で 人の目があるにも関わらず…… でも、この深くて長いキスは 僕の心を掬い上げた……

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