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第50話
仰向けになったまま
僕は天井をぼんやりと眺めた
「……双葉」
腕枕をした誠が声を掛ける
そして優しい吐息をひとつ溢すと、自由が利く方の手を伸ばし、僕の前髪に触れる
そしてその手が僕の体を包み
耳元に誠の息遣いが聞こえた
ゆっくりと誠の方を見ると、潤んで光る大きな瞳がそこにある
「……無理させてしまって、すみません」
その言葉を受け、小さく首を横に振った
ソファの上で
そしてベッドで……
誠と初めての経験をしたというのに
僕の心は、何処か晴れない……
何度押し込めても
悠との感触を思い出し
触れ方や愛し方が違う、と比較してしまう……
誠に体を向ける
と、誠の手が肌を滑らせ僕の背中へと回り、強く引き寄せる
僕はそれを払拭し、腕枕から頭を外して誠の胸へと顔を擦り寄せた
軽くシャワーで体を流し、着替えてリビングへと向かう
「……え」
そこにはスーツに着替えた誠がいた
時計を見れば、もう10時を過ぎている
「すみません、本当はやり残してきた仕事があるんです」
「………」
「カッコ悪いですね……」
誠は苦笑いをして見せる
それに対し、僕は首を横に振った
そこまでして、僕との時間を作ってくれてたんだ……
「そんな事ないです……
か、格好いい、…です」
顔が熱くなるのを感じ、視線を逸らす
すると誠の頬も少し赤くなり、僕から視線を外した
そしてその視界の先を見据える
「……あの、僕も…帰ります」
テーブルに置かれた鍵を、誠が拾う
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