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第52話
でも今回は、僕の事を気に掛け
バイト先まで迎えにきた悠は
営業時間にも関わらず、喫茶店が閉まっている事を心配しての事だ
連絡手段が断たれ、探し回り
最終的には僕の家の前で
祈るように僕の帰りを……
「……悠、ごめん」
その体を支えて部屋に上がる
ちゃんと連絡していれば
……僕が、ちゃんとしてれば
こんな事に……
罪悪感も重なり
胸の奥がチクチクと痛む
ベッドに仰向けに寝かせると、瞳を閉じたままの悠の顔を覗き込む
「……」
ぴくりとも動かなくなってしまった悠が、息をしていない様に見えて……
グイッ
その刹那
悠の腕に、首根っこを捕まえられる
「……え、」
と、驚く暇も与えない程素早く引き寄せられ、瞳を薄く開けた悠の唇に唇が当たる
慌てて悠を押し逃れようとしたが、悠はそれを許さなかった
「石鹸の匂いがする……」
悠の呟きに、心臓がどくん、と大きく跳ねる
「……」
「……」
悠の引き結んだ口端が少し下がり
まるで責めるような眼光を僕に寄越す
耳にあるリング状のピアスがキラリと鈍く光り、やがて悠の口が少し動いた
「……すげぇ、ムカつく」
首に回った方ではない手が伸び、僕の襟元に指を引っ掛けると、少し乱暴に服を引っ張る
その鎖骨の下に確かに付いた、いくつもの印……
「さっさと店閉めて、彼氏とサカッてたって訳か」
「……!」
悠の攻撃的な言葉に、心臓が抉られる
…だけど、それは紛れもない事実
「……うん、サカッてた」
悠から視線を外し、目を伏せる
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