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第55話

それから悠と会っていない 連絡もない 胸にぽっかりと穴が開いた様に そこから冷たい風が吹き込む様に苦しいけど でも、きっと時間が解決してくれる 誠さんと、共に歩むと決めたんだから…… 8時を少し過ぎた時 誠が帰ってきた 「お帰りなさい」 未だに顔が熱くなるけれど、すらりと言えた事が嬉しくなる 「ただいま」 誠が僕を優しく抱き寄せ、唇が舞い降りる 儀式であるそれも、最初よりスムーズになってきた気がする 「いい匂いですね」 部屋着に着替えた誠が白いソファへと座る 肉じゃが、和え物、味噌汁…など、和食が並ぶ 手を合わせていただきますをし、夕食に手をつける 「…美味しいです」 肉じゃがを食べた誠が嬉しそうに微笑む 「良かった…です」 ほっと胸を撫で下ろした後、再び口を開く 「この肉じゃが、以前大輝が美味しいって誉めてくれたんです」 「浜田くんが?」 「……はい、他のは全然何も言ってくれなかったのに」 そう言って誠に微笑み返すと、誠は少しだけ憂いを帯びた表情を見せる それに気付き、直ぐに口を閉ざすけれど、誠は何事も無かったかのように口を開いた 「浜田くんは、手厳しいですね」 「……はい」 「肉じゃが以外も、美味しいのに」 「………」 誠は小鉢にあるお浸しを箸で摘まむ 「……前から聞きたかったんですが 浜田くんとは、友達以上の関係になった事はないのですか?」 誠の言葉に、僕は息を飲んだ …大輝とは そんな関係じゃない…… そう言おうとして口を開こうとした時、誠の方が先に口を開く

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