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第58話
翌日のバイト先に、昨日僕の名前を聞いた営業マンが来た
やはり頻りにハンカチで額や首筋に流れる汗を拭っている
クールビズとはよく言うものの、やはり営業回りとなると話は別の様だ
……きっと誠さんも、この暑い中……
そう思ったら、冷やしたおしぼりを二つ用意していた
「……あの、もしよければもうひとつお使い下さい」
そう言って渡すと、営業マンの顔に笑みが溢れる
「ありがとう、助かるよ」
その言葉が嬉しくて、僕も笑みを溢す
「ところで…」
彼は少し真面目な表情になり、僕をじっと見つめた
「…その、双葉君は……」
瞳を左右に動かした後、少し慌てた様に完全に僕から視線を外す
「あ、いや……何でもない」
そう言って営業スマイルを見せる
言い掛けて遮られた事が気にかかったが、何となく首元を見られた様で落ち着かなかった
「……営業の方は、夏場大変ですね」
誠と夕食を囲んだ時、ふとバイト中の事を思い出して言った
その言葉を受け、誠が直ぐに反応する
「はい、夏用で通気性の良いスーツを着ても、暑いものは暑いですね……」
静かにそう訴えた誠に、僕は自分が涼しい喫茶店内で働いている事に申し訳なさを感じてしまった
「毎日暑い中、お疲れさまです」
そう言うと、誠は嬉しそうな表情を向ける
「ありがとうございます」
形のよい唇の端が、綺麗に上がる
それを直視出来ず、視線を逸らした
誠はこの生活を送る為、バイト先の喫茶店に寄らずに仕事をこなしている
九条の教育係も無事に解任となり、今は必要最低限の関わりしかしていないようだ
「最近、営業の方が多く来られるので、おしぼりを余分に渡しています」
その言葉を受け、誠が嬉しそうに微笑む
「それは助かりますね」
誠に誉められたようで、嬉しくなる
「……明日、久し振りに僕も寄ってみたいです」
誠の手が
僕の肌を滑り下りる
そしてうなじに当てられた、熱……
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