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第72話
ギリギリと胃が痛む
膝から腕を外し、お腹を抱える
と、その時チャイムが鳴った
……え
もう大分時間が経ったけれど
まさか、誠さんが……
ベッドから下りドアホンを見れば、そこに映っていたのは、和兄だった
テーブルに冷えた麦茶を出す
もう酔いは冷めたのか、和兄はしっかりした顔つきで僕を見た
しかし、その表情は何処か浮かない顔をしている
「…さっきは悪かった」
眉根を寄せ目を伏せると、兄はそう言った
「双葉の為と言いながら、俺が受け入れられなかっただけだ
…その、弟が…女みたいに男と……」
「……」
「俺にとってお前は弟で、男で……
男なら……」
そこまで言って、兄は一度口を閉ざした
テーブルにあるグラスに手を伸ばし、それを一口飲む
「……お前宛に来た、結婚式の招待状を届けた日…覚えてるか?」
真っ直ぐ兄の瞳が向けられる
「……うん」
「あの時、お前が過呼吸を引き起こして、代わりに俺が来客対応をしたよな」
……しつこい勧誘だった
あの時兄はそう言った
だけど、僕は知ってる……
四ヶ月前、僕の幻が見えると言って突然現れた悠は
最初こそ平静を装っていたものの
強すぎる精神薬のせいで、異常な副作用を起こし
意識が朦朧とする中
悠は僕に、この1年に何があったのか打ち明けてくれた、から……
「あの時、鳴川が来たんだ
お前と会ってちゃんと話がしたいと、真剣な顔でな」
「………」
「もしあの時、お前に会わせていたら……いや
俺が招待状など持って行かなければ……」
グラスをテーブルに置き、兄が体を後方へと下がる
そして両手をつき、頭を下げた
「お前達の仲を、決定的に壊してしまったのは……俺だ」
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