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第81話

……大輝……どうして…… 体がガクガクと震える …大輝だけど 大輝なのに……怖い…… 直ぐ傍まで顔が近付き、鼻先に大輝の息がかかる 「………!」 唇を硬く閉じ、怖くてぎゅっと目を瞑る ……ちゅっ、 リップ音が、部屋に小さく響いた 「……ん、」 当てられた唇が、熱い…… 柔らかな粘膜が触れ、くちゅりと淫らな水音が続けて小さく響く ……しかし 先程から、瞼の裏に光を感じ そっと瞼を押し上げる 「……だい…き」 僕の腕の内側…手首の下辺りに 大輝の唇が再び押し当てられ、リップ音が二度響く 「…ん、双葉……もっと…」 唇を離した大輝は、近くに置かれた携帯に手を伸ばし わざとらしく電話口に、甘く蕩けそうな声で、呟く 「……」 それはわざと誠を煽る行為に見え、僕をどうにかしようという浅ましいものなどではないと直ぐに理解する だけど、その行動の意味が汲み取れず、僕は大輝をじっと見つめた そんな僕に気付いてか、大輝が通話を切る と、気怠そうにゆっくりと僕から退いた 「……双葉、カルピスある?」 「え…」 大輝の口から出た言葉が、場にそぐわず拍子抜けしてしまう…… 「喉渇いた……、無いなら買ってくる」 僕の驚く顔を見て、ニヤニヤといつもの笑顔を見せる それが僕へのからかいであったかの様にも取れた 床に置いてあったキャップを拾って深く被り、大輝がスッと立ち上がる 「…大輝?」 体を起こして大輝を見上げる そんな僕を気にする様子もなく、大輝は両手をポケットに突っ込んで、口角を上げた 「……ま、双葉はゆっくり休んでおきなよ」 ちゃんとした説明もないまま、大輝は部屋を出て行く 残された僕は、へたり込んだまま、消えていく大輝の背中をただ見ていた………

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