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第82話
……怖い……
朝が来てしまった
……また昨日みたいに
スーツの人に……
兄が作り置きしてくれたスープは小分けしたまま冷凍庫に入っている
けど、それを食べる気も起きない……
「………」
何だかまた吐き気もするし、寒気もする……
体に力が入らない……
それでも起き上がると、鈍器で殴られた様に頭がズキッと痛む
……どうしたんだろう
体がヘン……
自分を抱くように身を縮める
突然カルピスを買いに出た大輝は
あれから戻ってこなかった
どういうつもりであんな事したのだろう……
誠さんに、どうしてわざと誤解させて……
『……双葉、いま幸せ?』
大輝の言葉がふと蘇る
幸せ……なのかな……
わかんない……
「………」
ただ、裏切れない……
誠さんの過去の人と
僕は同じ道を辿っている気がする
……蛍を見に行った日
離れようとした誠さんに
僕は引き留めて、求める様に要求してしまった
その努力を誠さんはちゃんとしていて
だからこそ、僕は……
首筋にそっと触れる
「………」
……でも、もう……
携帯が震えた
バイトを無事に終え、帰ろうと店から出た時だった
ポケットから取り出し、画面を開く
そこには、渡瀬 誠という文字が表示されていた
「……」
何となく、怖くて出られない……
何て言葉がくるのか
何て答えればいいのか……
躊躇している間に、手中の携帯が止まる
履歴を見れば、そこには昨日から不在着信の続く誠の名前……
「……!」
再び携帯が震える
画面を見れば、次はメールであった
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