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第89話
大空を二人で羽ばたき
やがて雲を抜けると
大海原へと辿り着く
…潮の香り…
悠の匂い…
ザザザザ…ザザザザ…
先の白くなった波が
穏やかに……でも大きく海岸に打ち寄せ
まるで呼吸をするかの様に
深く深く、引いていく……
どくん、どくん、
その波形が、シンクロする様に
悠の心音と重なっていく……
……次第に
重くなっていく体……
ぎゅっ、と悠にしがみつく
「…双葉」
耳元で悠の囁く声が聞こえる
「もう、離さないで…」
瞼をゆっくりと押し上げる
そしてゆっくりと頭を上げると、そこには穏やかな表情の悠の顔があった
「僕の傍にいて…ぎゅってして…」
汗ばんだ肌と肌が吸い付き
そこが再び濡れ、帯びる
横向きに並んで寄り添いながら
互いの足を絡める
「…好き……どんなに諦めようとしても……
もう………」
懇願する様に瞳を向ければ、悠は真剣な目を僕に返す
「……離さねぇよ」
そんな僕を照れた悠が強く抱き締める
不意に、足元からぱしゃりと波が押し寄せ
体中が濡れる
ザザザザ…ザザザザ…
この世界でたった二人
誰にも、邪魔されない……
今だけは、僕と悠だけのもの
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