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第32話 友情と恋情
テストも面談も無事に終了した数日後、
月乃は廊下に貼り出された
実力テストの順位表に目を丸くして驚いていた。
それは隣に居た朝陽も同様で、
更には周りの生徒だって多少ざわついている。
そしてその驚きの伝播の原因が
月乃達の後ろから呑気に話しかけてきた。
「月乃も朝陽も、早いな。
そんなに自分の順位が楽しみだったのか?」
「……そりゃあ気にはなった、けど、
君なあ……なんで、なんだこの順位……!」
「え、ああ……凄いな、俺の名前があんなところにある」
「ひ、他人事みたいに言うなよ一夜!
凄いじゃん、ていうか、なんで!」
そう、多くの人物が驚いていたのは、
一夜の順位が今までと比べて異常に高かった事。
それも、またしても学年一位である天と一点差で、
なんと学年二位などという順位である事だった。
当の本人である一夜はあっけらかんとしているが
しかし月乃や朝陽はそうはいかない。
何せ幼なじみであり、普段の一夜をよく知っているからだ。
「なんで、って、そりゃあ……なあ、月乃?」
「はっ?
……、……君、まさかとは思うが、
アレのためだけにこんなに……?」
「当たり前だろ、何せ……
月乃がやっと、デートしてくれるんだからな」
「えっ!?
月乃とのその約束だけで頑張ったの一夜!」
そういえばそんな約束をしていたと思うし、
けれどテストなどなくとも一緒に出掛けるなんて
簡単にできるのにどうして、と
そう思った時、月乃の後ろから肩を引く腕が伸びてきた。
「わ……っ!
何……って、天……どうした?」
「門限は7時だから」
「はっ?
ちょ、待て、君は俺の母さんか!」
「それ以降になったり帰ってこなかったりしたら
お前に何するかわかんないな」
じ、と、怒ったような顔で見てくる天に
月乃はたじろぎながらもわかった、と、
そう、頷こうとした。
しかし、今度は逆側から声がかかる。
「酷いな、月乃は束縛が苦手なんだ。
あんまり束縛すると嫌われるぞ、天」
「はは、お前の執着より万倍マシだね。
勉強できない演技はもういいの?
本当小学生の頃からお疲れ様って感じ」
周りに聞こえないような小声でやり取りをする二人に
朝陽は苦笑して、月乃は戸惑ったような顔をする。
演技、と、そう聞こえた気がした。
しかし一夜へと視線を向けても、笑われるばかりで。
数分間睨みあっていたと思えば、月乃は唐突に天の腕から解放された。
「月乃、今はまだいいけどそのうち決めてよね。
どっちをとるか、どっちもとらないか」
「へっ?
あ……えっと、それは、その……」
「月乃を困らせたくないなら、大人しく身を引いてくれ」
「その言葉、そのまま返すから」
前まではこんなにはっきりいがみ合わなかったのに、と
朝陽と月乃は不思議そうに顔を見合わせた。
そもそもこんなにはっきり言われると
どうしようもなく恥ずかしい、と、
月乃はそそくさと教室へ戻っていく。
「なあ一夜、天、なんかあったの?」
「……昨日、はっきり宣戦布告しただけだ、
月乃が現状どっちも選んだからな」
「そうそう。
お前には悪いと思ってるけど、
どうしようもなくてさ」
「あ、俺全然気にしてないって!
今までみたいに幼なじみで居られたらそれでいい!
でも月乃の事はちゃんと大事にしてよ!!」
びしっ、と指を指された一夜と天は
ありがとうと朝陽の器の大きさに礼を言って
それからお互いの教室へと戻っていった。
「月乃も大変だなぁ、
一夜も天も、普通じゃなさそうだ」
静かになった廊下に、朝陽の嬉しそうな声が静かに響いた。
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