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第40話 4

    「本当に、ごめん」 「……君、頭でも打ったのか。  いや、どっちかっつーと頬っぺたか?」 「……こ、こっちは素直に謝ってんだよ!  いちいち揚げ足とんじゃねえこの根暗メガネ!  ……いってぇ!!」 「謝罪に悪口含めんじゃないよこのバカ」 翌日、人気のない廊下で、月乃は風磨と千風に 呼び止められて謝罪されていた。 腰を折って頭を下げてきた千風の頬は痛々しく腫れており、 しかし謝罪が信じられなかった月乃の言葉に 千風は食ってかかるが、風磨に思いっきり頭を叩かれる。 「……風磨先輩、何もそんな、  腫れるほど殴らなくてもよかったんじゃ……」 「……ああ、違うよ月乃くん。  千風のこれは、朝陽くんから」 「朝陽が……!?」 「うん。  わりと乱暴よ、朝陽くんは」 千風の頬が朝陽からだと聞いて、月乃は目を丸くする。 けれど風磨はくすくすと笑うばかりで 千風はむっすりと口を閉ざしている。 本当に朝陽が、と思い、そして、 何故朝陽が千風の関わりを知っているのかと疑問が浮かぶ。 「……お前がさあ、朝陽くん達にさ、  何にも俺の事言わなかったから……  俺が自首したの!兄ちゃんと朝陽くんに!  そしたら兄ちゃんには正座で長時間説教されるし  朝陽くんにはスッゲーマジな顔で一発殴られた!」 「……君、もしかしてあの時どっかに居たのか?」 「偶然聞こえたんだよ!  俺の事言われんだろうなって思ってたらお前、  何にも言わないから何考えてんだって思って……」 「それは俺も気になる。  俺の火傷の事はともかく、  あの人の息子だって事とかも全部伏せたんだって?」 じっ、と二人に見られ、月乃はいたたまれなさそうに視線をさ迷わせる。 それから、小さくため息をついて話し出した。 「その、騙された事については……母親が居なくて、  父親からは暴力って言ってたから、金もらってたし、事情がありそうだと思って。  家族に関しては、俺もあんまり、人に知られたくない家庭環境だから」 「何、お前も家でなんかされてんの?」 「おい千風、知られたくないって言ってるだろ」 「あ、そっか。  つーか、何なのそのお人好し。  俺だったら絶対言ってやるし何なら復讐する、  俺のやった事に関しては」 じゃあ人にするんじゃない、と風磨に叩かれた千風は 後ろ頭をがりがりと掻いて、それから 改めて月乃に向き直った。 「悪かったよ、本当に。  生活費のためとはいえ、嫌いな奴でも  やっちゃダメな事だったって今ならわかる。  朝陽くんにも嫌われちまったし、反省してるよ。  お詫びに何か、するし……」 「いいよ、別に、風磨先輩が助けてくれたし。  それに朝陽は、俺の友達だったら多分、嫌わない」 「え……?」 「風磨先輩は、触られても怖くなかったから  君もそうなんじゃないかと思って。  そういう相手は俺にとって貴重なんだ、  朝陽に嫌われたくなくて、俺に対して何かしたいなら、そうなるのが最適なんじゃないか」 月乃の言葉に、千風も風磨もきょとんとする。 それから、二人で顔を見合わせたと思ったら 心なしかきらきらとした目で見つめられた。 「お前の事、すっげー合わなさそうって思ってたけど、違うかも……!  俺も兄ちゃんも、友達になってくれる奴は大好きなんだ、なあ、ほんとに  俺らの事嫌いにならない?友達になる?」 「え、あ、ああ……俺は口が素直じゃないから、  本当に君と合わねぇかも、しれないけど……」 「朝陽くんも好きだけど、月乃くんも好きだ!  俺、隣のクラスにいるから、遊びにいく!」 「俺も月乃くんと朝陽くんのところに遊びに行くよ、  改めてよろしくね、月乃くん」 初対面の態度とは一変して、まるで ゴールデンレトリバーのようになついてきた千風に、 月乃は戸惑いながらも頷いた。 成る程、朝陽はこうやってなつかれたのか、と なんだか妙に納得して、差し出された手を握った。    

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