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第41話 増える面々

    浅原兄弟との事も落ち着いた日の昼休み、 月乃達は若干人数が増えたメンバーで学食に居た。 「朝陽くん唐揚げいる?飯足りてる?  俺のおかず何かいる?月乃くんは?」 「だからいらないって、大丈夫!  もー、ちゃんと自分で食べなよ千風!」 「俺も大丈夫、寧ろ唐揚げは君が好きなんだろ、  俺こんなにいらねぇから1個やる」 「あんまり甘やかさなくていいんだよ月乃くん。  あ、俺甘いの苦手だからデザートお食べ」 あたかも前々から仲良しでした、と そう言わんばかりに幼なじみに溶け込む千風と風磨。 あれから朝陽や月乃によって他二人にも紹介された 浅原兄弟は、月乃にもなついているせいで若干、 天と一夜の不評を買っていた。 今も、月乃に餌付けされ、餌付けする兄弟を忌々しそうに見ている。 「どうかした?西園寺くん。  あ、魚の食べ方綺麗だねえ、育ちがいいのかな」 「別に、なんでもありません。  魚の食べ方も普通だと思いますよ、先輩」 「なあなあ一夜くん、午後イチの授業なんだっけ?  移動なら一緒に行こうぜ、なっ!」 「……移動じゃない、体育祭の種目決めだ」 お互いにこにことしながらも不穏な空気を醸し出す天と風磨、 そして相変わらず幼なじみ以外にはとことん無愛想な一夜と、それを気にしない千風。 仲良くなるには先が長そうな光景にため息も出そうになるが そういえば、と、月乃達は体育祭の事を思い出す。 「体育祭かあ、俺何出よっかな~。  走るやつが好きだけど月乃と二人三脚とかも楽しそう!」 「絶対ぇやんねえから安心していいぜ。  俺は50m走にしか出ない、絶対だ」 「俺は……部活のリレーと、あとはそうだな……  何か駆り出されるかもしれないが、  まあ何でも大丈夫だろ」 「俺も50mだけかな、生徒会としての運営もあるし」 幼なじみ四人がそれぞれ話していると、 風磨と千風は顔を見合わせてからきょとんとする。 それに月乃が首を傾げると、二人とも 訝しげな顔で話に参加した。 「皆ほんと真面目だねえ、俺体育祭とか一回も出たことない」 「そうそう、俺も!  友達いねーし、長袖長ズボン参加あっちーし」 「ああ、そういう……。  今年も参加しないのか、千風とか  足速そうだし、一夜と天と同じクラスだろ」 「そうだよ、学校行事には参加した方がいいって!  まあ強制はしないけど、おれらと居たらいいじゃん!」 不意に火傷や暴力による傷痕が見えてしまうのがネックなのだろうと 朝陽と月乃は察して、しかしなるべく二人が 溶け込めるようにとフォローする。 風磨は苦笑いだが、千風はきらきらと顔を輝かせた。 「そうだ、一夜くんも天くんも居るし、  今年は参加してもいいかも……!」 「千風がやるなら、危ないから俺も居ないとかな、  体育祭はあんまり好きじゃないんだけど……  月乃くん達と仲良くしてたら楽しそうだしね」 最終的には、風磨も笑って月乃の頭を撫でた。 それに若干、斜向かいの天がピクリと眉を動かしたが 風磨はそれに気付き、天に対してにっこり、と笑う。 「なあ月乃、寮に戻ったらちゃんと部屋にいてね  ちょっと話があるんだ」 「話……?  今日じゃないとだめなのか?」 「特に用事もないんだろ、  俺も部活が終わったら行くから  空けといてくれると嬉しい」 「君も?  まあ……いいけど」 食事が終わって教室へ帰ろうとした時、 月乃は食事中おとなしかった天と一夜に呼び止められた。 二人が同時に話なんて珍しい、と そう思いながらも了承する。 ただ、天も一夜も少し不満そうな顔をしていたのが気になった。      

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