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第44話 3

    その日の放課後、月乃は朝陽に言ったとおり 天と一夜を部屋に呼んだ。 言われなくても来るつもりだった、と そう言って笑う一夜に笑い返す月乃の顔は少し緊張しているようだった。 「で、どうしたの月乃。  なんか顔強ばってるんだけど……」 「あの……その、昨日、あんまりちゃんと  君らに返事できなかった、から」 「……して、くれるの?」 少し顔を赤らめて見てくる月乃に、 天と一夜は驚いた顔をする。 絶対にちゃんと返事をしないだろうなんて そんな事を思って昨日あんな強行に出たのに、と お互いに顔を見合わせた。 「その、俺と君らって、本当に……  釣り合わないと思うから……えっとな、  返事は、君らの言うとおり、最後まで  しないつもりだったんだけど……」 「……やっぱり」 予想通りだと言わんばかりのため息に 少し気まずそうになる月乃だが、 それでも天と一夜をしっかり見てから 緊張したように息を吐いた。 「俺、どっちかを選ぶとか、  どっちも断るとかは……無理なんだけど」 「ああ、知ってる。  ……それで?」 「……我が儘だと思うし、君らの欲しい答えじゃ、  ないかもしれねぇし、そもそも良い答えじゃねえんだけど、さ……。  俺、天も、一夜も、二人とも好き」 少し身を乗り出して、並んで座る二人それぞれの 手を掴む月乃の顔は、緊張で強張り 耳の辺りまで赤くなっていた。 天と一夜は、それを聞いて少し呆けたように目を見開く。 「……ごめん、ちょっとびっくりした。  月乃が、ちゃんと返事くれるって思ってなかった」 「牽制したり独占したり、少なくとも卒業まで、  そんな事を一方的に続けてくと思ってた」 それぞれ、掴まれている手をそっと離して 改めて月乃の手を自分の手に絡めて 二人とも嬉しそうに笑う。 月乃はそれになんだか気恥ずかしくなって、 少し俯いたが、小さな声で続ける。 「俺と一緒に居るとその、  いろいろ……言われたりするだろうけど、  よ、よろしく……」 「そんなん気にしねぇよばーか。  まあ、そのうち俺だけ選んでくれてもいいけどね」 「そんなのを言う相手は黙らせるから大丈夫だ、  最終的に選ぶのは俺でいいんだぞ月乃」 「……き、君らなあ……」 言葉と一緒に、それぞれの頬におとされた唇に 月乃は真っ赤になりながらも 自分もそれぞれに返して、嬉しそうに笑った。    

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