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第49話 自覚と本音
「お前、昨日、朝陽と一緒に出掛けてたね。
あれ、お前から声かけたんだって?
俺も一夜も、お前からは誘ってくれないくせに」
「天……。
いや、君も一夜も、部屋でよく一緒に居るだろ」
「……お前さ……いや、やっぱいいや。
お前にこういう事話した俺が悪かったよ」
次の日の昼休み、月乃は不機嫌そうな天に
人気のない廊下で話しかけられ、
そのまま目も合わせずに冷たく話を切り出された。
見られていた事と、朝陽に聞いたんだろう事、
それらを察して、月乃は天を窺い見たが
天は複雑そうにため息をつく。
「お前で遊ぶフリしてた時の方が、
まだお前からの好きが感じられて良かったな」
「……、……君の事も一夜の事も、
ちゃんと好きだって、俺言ったぜ?」
「そうだね、まあそれでいいか、
日曜日はちゃんと予定空けとけよ」
「え……っ、天、一緒に学食行かないのか?」
「今日は一人で食べたい気分だから」
じゃあね、と、立ち去っていった天を見送って
月乃は天の背中が見えなくなったあたりで
眉間に皺を寄せてため息をついた。
「恋人なんて贅沢させてもらってんのに、
俺が独占するわけに、いかないだろ……」
俯きながら、月乃は小さく呟く。
そして、月乃も学食とは違う方向に足を向ける。
しかし、それがいけなかった。
隣の女子校と共同の、両方の校舎の間にある購買。
そこへと向かう途中、月乃は女子二人に呼び止められた。
「あの……西園寺くんと、よく一緒に居る人ですよね」
「え、ああ……そうだけど、
天に何か用事があるのか?」
「そのっ、今度の日曜日……!
西園寺くんと一緒に出掛けたいんですけどっ、
予定が空いてるかどうか、知ってますか?」
「……日曜日……?」
おとなしそうな黒髪ボブの、目がぱっちりした、
あまり女子に興味のない月乃から見ても可愛い生徒。
そういえば前に天が部屋に呼んでいた女子も
黒髪ばっかりだったような気がする、と
顔を真っ赤にする女子を見ながら月乃は考えた。
日曜日、それは月乃が誘われている日。
しかしここで断って、もしも自分と一緒に居るところを見られてしまえば
勿論空気の読めない酷い男だと思われてしまうし、
かといって日曜日の誘いを断れば天が怒るだろう。
「あー……俺はその、あんまり知らねえ、かな」
「じゃあ、あの、駿河くんは……?」
「一夜……?」
「はいっ。
あの、私は駿河くんの事が好きで……!
それで日曜日、四人で、お出かけできないかなって思って、ですね……」
黒髪ボブの女子は、天が好き。
その隣にいた茶髪の小柄な女子は、一夜が好き。
まるで謀ったかのような組み合わせと日取りに
月乃は首の辺りを掻いて悩むが、
目の前の二人は心なしか潤んだ瞳で月乃を頼るように見つめてくる。
面倒な事になった、と、少し唸ってから
月乃は諦めたようなため息をついた。
「えーっと……予定、空けてもらえないか……
頼んでおいてみるから……」
「ほ、本当ですかっ?」
「よろしくお願いしますっ……!」
日曜日は楽しみにしてたのにな、と
心のなかでそう呟いて、ぱたぱたと駆けていく女子を
月乃は複雑そうに見送る。
が、女子の姿が見えなくなったと同時、
月乃は痛いくらいに肩と、それから腕を掴まれた。
「い……っ……!!」
「予定が……空いてるわけねぇだろ。
お前、本当ふざけてんの?」
「俺、日曜日楽しみにしてたんだけどな……月乃」
「……あ……ふ、ふたり、とも……」
そこにはいつの間にか、天と一夜が居て。
どう考えても怒っている二人の様子に
月乃は怯えた顔で青ざめた。
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