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第54話 3※

    人の顔はこんなに熱くなるものなのか、と 月乃は羞恥に駆られるなか、半ば現実逃避のように そんな事を考えていた。 一夜と天に見られながら、月乃は自分の後ろを慣らす。 ひどく恥ずかしく、どうしようもなく昂ってしまうような、そんな感覚。 自分のいいところなど少しもわからなかったが 軽く体に触れてくる天と一夜に、幸福感を強く感じる。 「っ……ん……は……っ」 「月乃は可愛いな、素直で」 「まあ、普段の悪態よりかは断然可愛いかもね。  ……ほら月乃、それじゃ全然拡がらないだろ。  痛いのがいいなら無理にとは言わないけどね」 「……よく、ない……そんなの……」 くすくすと笑いながら言ってくる天に 月乃は眉を下げて返すが、天は変わらず笑うだけだ。 しかしそんな天に、月乃は目に涙を溜めながら 甘えるように顔をすり寄せた。 「なに?どうしたの?  月乃が最初に俺を…………」 「……っ、た、頼むから……代わって……  俺、自分の体のことわかんねぇ、から……  このままだと、君のこと、いつまでも気持ちよくできない……  君だけ、まだ、なのに……」 「…………、…………あー……もう……。  お前どこで覚えてくるんだろうね、そういうの」 「え……っ、んぁ、っ!」 ぐず、と、鼻を鳴らす月乃に、 参ったと言うように片手で顔を覆った天。 最初こそ月乃をいじめてやろうという気持ちばかりだったが、 そんなことを言われては、と、笑ってから 月乃の後ろへ指を突き入れる。 「いい?お前のいいとこはここ、わかる?  覚えてね、月乃……」 「っあ、っん、ん……っ!」 「いいな、俺も月乃にそんな事を言われたかった」 「はは……いいじゃん、お前は散々  月乃で好き勝手したんだし?」 自分でしていた時とは全然違う、 月乃のいいところを確実にとらえてくる指に 月乃は考える余裕など消え去り、 ただ天にしがみついてされるがまま快感を受け入れる。 初めての時は本当に拡げるだけだったのに、と そんな事を思いつつ、天は現状を少し自嘲する。 「こんなにハマるなんて、想定外だったなあ」 「想定外?  よく言う、お前昔から、月乃ばっかりなくせに」 「ぁ、っふ、あ……っ?」 「ふふ、月乃は気にしなくていいよ。  お前はたくさん愛されてればそれでいい」 ずるり、と指を抜いて、優しく月乃の額に唇をおとすと、天はゆっくり月乃の中へ入っていく。 大事にしたい、優しくしたい、いろんな顔が見たい、 意地悪をしてやりたい、甘やかしたい、甘えたい、 いろんな感情をない交ぜにしながら 天はそれでも幸せな気持ちで月乃を抱く。 それは一夜も同じで、優しく笑いながら月乃とキスをした。 「お前は確かに、二人分愛されてるくらいが  採算がとれそうだな」 「……っぁ……っ、ん……あ…っ!  でも、っ……俺から、なにも……っ!」 「お前の全部に触れるのが、俺と一夜だけなら…  それでじゅうぶん……っ」 余裕のなさそうな顔で笑う天に どうしようもないくらい心が幸福になりながら 月乃は天に、それから一夜に自分からキスをする。 「……そら、も、いちやも……っ俺は、  だいすき、だから……っ」 「……ああ、俺もだよ、月乃……」 優しく月乃を抱き寄せて、天は月乃の白い腹へと欲を吐き出した。 今までは快感はあったが、どこか不安で 離したくない、繋ぎ止めたい、そういう心で埋まっていたというのに 恋人としての行為の後にあったのは幸福感だった。 今度は一夜に抱き寄せられる月乃を見ても 浮かぶのは嫉妬じゃなく、月乃が愛されている安堵。 これが恋人になる感覚か、と 天はそう自覚しながら月乃にまたキスをした。 「……やっと、月乃が自分のものになったって  そんな感覚がする」 行為の後、余韻に浸りながら一夜もそんな事を言い出した。 疲れきった様子の月乃は、目線だけ二人に向けて 二人を交互に見やる。 「……俺が君らのものだって事は……  天も一夜も、俺のもの、なのか?」 じっ、と、まっすぐ二人を見て言う月乃に 天と一夜はお互い見合ってから、 それぞれ月乃の頬へとキスをする。 「月乃が、俺達を好きなうちは」 「あと、お前が俺達に独占されてるうちはね」 「……そうか。  はは、世の中の女性にころされそうだ」 言いながらも、月乃は 今までで一番嬉しそうに笑った。    

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