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第67話 慰め

    翌日から、柴田はやたらと風磨に構われるようになった。 保健室登校のような風磨に呼び出されたり、 いつか会った空き教室だったりと 柴田を呼んでは、甘えるようにすり寄ってきたりする。 表情はいつも、楽しんでいるようなもので。 まるで試しているようなそれに 複雑な気持ちにならないでもなかったが、 それでも柴田は頭を撫でたり凭れさせてやったりと 風磨を甘やかしていた。 「雄星くん、風磨先輩と付き合ってるのか……?」 「いや、そういうんじゃねえ。  ただ呼び出されたりしてるだけだ。  ま、俺としては嬉しいんだけど」 「なんか……最近、風磨先輩、穏やかになったから  俺は君と上手くいったんだとばっかり……」 寮の談話室で読書をしながら、 月乃は柴田と向かい合って座り、話をしていた。 柴田と和解してから時折している交流は 月乃にとって落ち着く場所で。 柴田が不器用ながらも自分に歩み寄ってくれるのが 単純に嬉しかったりもした。 「雄星」 「……風磨先輩。なんすか?」 「ちょっと話したいから、  今から俺の部屋、来れる?」 「今から……?」 と、そこに陰が差したかと思えば 今まさに噂をしていた風磨が、柴田の後ろから声をかけてきていて。 明らかに月乃と話していた途中の柴田を 遠慮もなく呼ぶ風磨の口元は、いや、 口元だけは笑っている。 「まあ、いいっすよ。  月乃、悪いな、また今度」 「ああ……またな」 「ごめんね月乃くん、  また埋め合わせはちゃんとするから」 雄星、と、明らかに前とは違う呼び方と ただの先輩後輩ではなさそうな距離感。 本当に何があったのかと、月乃が首をかしげた時だ。 ずしりと、肩のあたりに重みがかかった。 「なんか、つきあってた頃の風磨みたい」 「朝陽……。  いや、でも雄星くんは付き合ってないって」 「そうなの?  まあ、でも……おれが月乃達以外と話してる時は  よくああやって割り込んできてたけどな」 重みの主は朝陽で、月乃は読書を中断して朝陽に向き直る。 どこか安心したような横顔を見ながら、 月乃は柴田と風磨の事を考えた。 「……二人とも、幸せになれたらいいけど」 「そうだね、まあ、月乃が望むんなら」 「俺が……あ、おい朝陽……っ?」 眉を下げて笑った朝陽は、珍しく早々に 自分の部屋へと戻っていった。 ぽつんと残された月乃は、とりあえず本をしまい、 自分の部屋へと戻ることにした。       

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