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第71話 2

    「お待たせ、帰るぞ……おい月乃、聞いてるか?」 「月乃?」 「えっ、ああ……わ、悪い。  一夜も一緒になったのか……お疲れ様」 じゃあ頑張って、と、相談に乗ってくれた周が 奥へと引っ込んでから、月乃はアドバイスの内容を 思い出して考え込んでいた。 そしてしばらく経った頃、天と一夜がそろって 図書室へと迎えに来た。 「じゃあ、俺はこっちだから」 「……あ、一夜……」 他愛のない話をしながら、天の傘に入れてもらって 寮までを歩いていた月乃は、寮に着いて談話室を抜け 自室の方向へと帰ろうとする一夜の腕を掴んだ。 いつもなら特に名残惜しくもなく手を振られるのに どういう風の吹きまわしだと、一夜と天は 不思議そうに月乃を見た。 「どうした?」 「あー……と……その、  最近、君が来ねえから、今日はどうかなって……」 「……なんだ、そろそろ天だけじゃ不満か?」 「あ、っいや、そういうわけじゃねぇけど……!  君とも、いろんな話がしたいから……」 目を逸らしながら言う月乃に、 一夜は少し驚きつつも笑って月乃を撫でる。 天は腕を組んで少し面白くなさそうだが 別に来ればいい、と了承し、一夜も一緒に部屋へと 戻ることとなった。 「それにしても、本当に珍しいな。  月乃はあまり誘ってこないだろう」 「……恋人なんだから、誘ってもいいだろ……。  それにその、天も……」 「ん?」 「えっと……最近、生徒会が忙しそうで、  あんまり一緒に居ねぇから、寂し…………」 部屋につくなり、一夜と天を隣に引き寄せた月乃は また目を逸らしながら、天にも普段言わないような 気持ちを小声で伝える。 すると、言葉の途中で天に肩を抱きよせられ そして耳元へと唇を寄せられる。 「……天?」 「お前が、やっと素直に言ったのは嬉しいよ。  でもさ……それ、誰の入れ知恵なのかなぁ?」 「え……っ!?」 「ははっ……そうだな、月乃、  俺達を誤魔化すつもりなら、目線の癖は直そうな」 にこにこと笑う二人は、言葉通り嬉しそうではある。 しかし同時に、楽しそうに月乃に問い質す事に 月乃はお手上げだと言うように両手を挙げた。 「……わかった、悪かったよ。  図書室の周さんに相談したんだ、  天によく怒られるからどうしたらいいかって。  そしたら、素直に寂しいって言えって  そう言われたから……」 「ああ、待ってる時にか」 「……俺は君らと違って恋愛経験ないんだ、  誰かに相談するくらいゆるしてくれよ」 「そうやって、顔を赤くしてくれてたら  俺達も喜んで受け取ってたさ」 せっかく、柄にもない事をして頑張ったのに、と そんな事を思いながら、月乃は一夜にもたれ掛かって 天の腕を引いて引き寄せる。 喜んでほしくて相談はしてみたが、 結局二人のいいようにしかならなさそうだと いつもの光景に安心したように笑った。    

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