7 / 75
第7話
「怜司、そんなの押しつけるな」
「昨日の思い出しただけで興奮して、ガチガチになっちゃうんだよ。龍のエロい顔や声を全部覚えてる」
「くっ、思い出さなくていい……」
顔を俯かせて苦しげに告げた僕の耳元に、くすくす笑った怜司は顔を寄せる。
「兄貴とは違って、俺のハジメテを龍に全部捧げてるのに。すごく嬉しかったんだ」
弾んだ声で言うなり、耳の穴に舌を容赦なく突っ込む。
「ひゃっ!」
生温かい怜司の舌がスクリューのような動きで、僕の耳を犯す。嫌でも耳に聞こえるぐちゅぐちゅという音に、不快感がどんどん増していくのに、背筋から下半身にかけて、ゾクゾクとしたものが流れた。
「れぇ、じっ…やめっ、やだっ!」
「ハハッ、龍のも大きくなってんじゃん。感じてる証拠だろ」
「ちがっ…あ、うっ!」
僕からの否定のセリフを、怜司の唇が塞ぐ。押しつけられた唇から差し込まれる肉厚の舌は、僕の口内を味わうように上顎を何度もなぞった。ゆるゆると動かされるたびに、ビクッと躰が震えてしまう。
「あー、早く龍のナカにぶち込んで、めちゃくちゃにしたい。俺のでイカせたくてたまんねぇ」
首筋にかかる熱い息が妙にくすぐったくて、肩を竦めてやり過ごす。これ以上、怜司に手を出されないようにしたいのに、両手首を壁に押さえつけられているせいで、防御すらできない。
(ああ、もう嫌だ……。なんでこんな目に遭わなきゃならないんだ)
目をつぶり、次の衝撃に備える僕の耳に、電子音が聞こえた。
「チッ、制限時間だ」
僕の手首を押さえつける怜司の腕から力が抜け、あっけなく解放された。よろよろとその場にしゃがみ込む僕に、怜司はなにもなかったようにほほ笑む。
「龍、また明日な」
僕の返事を聞かずに、颯爽と部活に行った怜司の背中を、黙ったまま見送った。
もうふたりきりにならないことを心に決めて、ゆっくり立ち上がる。怜司の好き勝手にされないようにしなければと、対策を考えたのだった。
ともだちにシェアしよう!