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第31話
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しばらくしてからテキストの傍らに、浩司兄ちゃんの手によって湯気の立つマグカップが置かれた。
「龍は砂糖多めのカフェオレにしたけど、大丈夫か?」
「うん、ありがとう! いただきます」
浩司兄ちゃんが作ってくれた温かいカフェオレが冷める前に飲もうと思い、急いで手を伸ばした。一口飲んでみたら、思ったよりも甘めに作られていて、コーヒー特有の苦みが全然なく、カフェオレというより、ちいさな子供が喜んで飲みそうなコーヒー牛乳といった感じだった。
「浩司兄ちゃんが甘めに作ってくれたおかげで、なんだか癒される気がする」
「良かった。俺も同じのなんだけど、怜司はいっちょ前にブラックなんだぜ。今から届けてくる」
僕がもう一口飲んだのを見たあとに、浩司兄ちゃんはゆっくりした足どりで二階に移動した。
お昼ご飯を食べて、お腹がいっぱいになってるせいか、少しだけ眠気があった。それがコーヒーのカフェインで覚醒したからか、次第になくなっていく。
「浩司兄ちゃんに、もう一度お礼を言わなきゃな」
マグカップを両手に包み込みながら、頬を緩ませる。こうして優しくしてもらえることにありがたみを感じつつ、ふたたび温かいカフェオレに口をつけてから、テキストの難解な問題に挑戦した。
怜司と浩司兄ちゃんの指導をもとに躓きながらも、回答できなかった問題をどんどん解いていく。
「ん……?」
頭が揺れたわけじゃないのに、突然視界がちょっとだけぐらついた。何度か頭を振って気合いを入れ直し、問題に取り組む。だけど数分後、同じように視界がぐらりと揺れ動いた。
「なんだろ、この変な感じ。頭を使いすぎて、脳みそがオーバーヒートしちゃったのかな」
目頭を押さえながら、両目をぎゅっとつぶってみる。表現できない眠気が、じわじわ侵食してくるのがわかった。
(浩司兄ちゃんが二階から戻って来るまで、ちょっとだけ仮眠をとろう。そしたらきっと、このしつこい眠気がなくなるよね)
テキストの上に顔を隠すように突っ伏し、眠気に身をまかせる。小さな頃によくやっていた、躰をぐるぐる回転させて目が回るような、ふわふわした感覚があった。
「ん~、なんだかすごく気持ちがいい……」
玄関で靴を履いたまま床に突っ伏するという、かなり無理な体勢で寝ているというのに、布団の上で寝ているような感じで、深い眠りに落ちていったのだった。
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