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第43話
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和室で仮眠をとったあと、ここに来たときに着ていた服に身を包み、三人で楽しくピザを食べた。玄関でいただいたカフェオレに薬を使われたのがわかったゆえに、注意しながら飲み物を確認する。
皆で飲めるようにペットボトルから注いでいたので、眠くなる薬を使われないと判断。安心して飲食することができた。
その後、浩司兄ちゃんに宿題を教えてもらい、残りをやっつける。怜司も躓いていた問題に、果敢にチャレンジしていた。
「浩司兄ちゃんは宿題、大丈夫なの?」
「三年は一週間前に出されているから、もう終わってるんだ」
「え~、それってズルい!」
「休み明けに模試が待ってる。大量の宿題を終えてから、模試の勉強もしなければならないが、それでもズルいって言える?」
くすくす笑いながら、僕の額にデコピンした浩司兄ちゃん。しかも痛くないデコピンをお見舞いされたことで、浩司兄ちゃんの優しさが胸に染み入る。
「龍、兄貴に文句を言ってないで、とっとと終わらせろよな。俺よりも進みが悪いんだから」
「そんなこと、怜司に言われなくてもわかってる……」
「怜司、俺と龍がイチャイチャしてるからって、当たることないだろ」
浩司兄ちゃんは言葉にしたイチャイチャを怜司に見えるように、やんわりと僕の髪に触れてから、地肌をなぞる感じで髪を梳く。
「んぅっ……」
以前の僕なら「こんなことやめて」って、きちんと口に出していた。だが気持ちよさを知ってしまった今は、そのセリフを言えずに、感じてしまう声を抑えるのに必死だった。
「龍、変な声出すなって。勉強中だぞ」
「ごめん」
「俺が龍の性感帯を全部知ってるせいで、つい触ってしまうせいだ。怒るなら俺だろ、相手が違う」
「俺だって、龍のことなら知ってるし!」
意味深に笑う浩司兄ちゃんと怒りを露にした怜司が、テーブルを挟んで目線を合わせる。お誕生日席にいる僕は、おろおろしながらふたりの様子を窺うしかない。
浩司兄ちゃんが不意に右手を伸ばして、怒っている怜司の顎の下を人差し指でつつっと触れた。
「ぅお゛っ!」
「ちょっ、怜司、なに今の声。カエルを踏みつぶしちゃったみたいな」
思いっきり僕が吹き出したら、それにつられるように浩司兄ちゃんもゲラゲラ笑いだした。
「ホントそれ! ヤる気を削ぐような声を聞いたら、誰も怜司には手を出さないって」
「しょうがないだろ。龍みたいなかわいい声なんて、俺は出せないわけだし」
「でもアレはないよ!」
この楽しい雰囲気はそう、僕たちがまだ小学生で仲良く遊んでいた、あのときの雰囲気だった。久しぶりにそれを体感することができて、僕は終始ご機嫌でいられたのだった。
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