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第72話 トイレの中で

僕はおしっこをするために、寛げた場所からおちんちんを取り出す。 最近おじさんに触られたりするせいか、そんな意味を含まない時ですら思い出してしまって困る。 思い出したら最後、快感を求め始めちゃうから。 いけない、いけない!と思いながらおしこっを始めた。 シャーッ 曲が流れているとはいえ、静かな空間だからやけに響く。 ん。僕だけ? 隣の人、出ないのかな? さりげなく隣に視線だけをやると、ドキッとした。 なんだか見られてる? そんなはずはない。 だけど隣の人は一向におしっこをする様子は無いし、こっちに顔を向けてる気がするんだけど…。 気のせいだよね? そうは思っても、しっかりとそっちへと顔を向けて確認出来ない。 もしも僕の方を見てたら…って思ったらダメだった。 怖い…。 何でこっち見てるんだろう。 どこ見てるの? 早く!早く!早くおしっこ終わってくれないかなぁ。 こんな時に限って、おしっこはなかなか終わってくれない。 放課後トイレに行っておけば良かった。 シートに着く前に、おじさんに待ってもらって行っておけば…なんて思っても後の祭り。 シャー… 漸く勢いが無くなってきた。 たぶん普段と変わらない量だと思うけど、意識したせいか長く出た気がする。 時間にしても短いはずが、やけに長く感じた。 お、終わった~! 僕が安堵の溜め息をついた時だった。 「おしっこする所、可愛かったよ」 ゾワッ 背後を通りすぎた男の人が、厭らしくねっとりとした口調で言いながらトイレを出て行った。 おしっこする所って、する所って、何?!僕のその様子ってこと?!それとも、おちんちんの事!? 「~~~っ!」 僕は靴音が遠退くと、大慌てで手を洗ってトイレを出た。 それから早足で一目散にシアター内に入ると、カップルシートに座るおじさんに飛びついた。 「!?」 飛びつかれたおじさんは、驚いた様子だったけど、直ぐに何かを感じてくれたらしい。 「どうした?」 とても真剣な口調で問いかけてくる。 心配してくれて嬉しい。 特に何かをされた訳じゃないけど、言っておかなければ僕の心が落ち着かない。 「結斗?」 優しく、それでいて強い口調。 この感じは言わなくちゃって気持ちにさせるんだ。 おじさん、上手いんだよね。 それが今はありがたい。 「あ、あのね…」 僕は、トイレでの出来事を話す事にした。

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