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第71話 得意気な気持ち

僕がグダグタ考えていると、おじさんに、脇の下を持ち上げられ隣に座らせられた。 「ほら。このソファ座り心地なかなかだぞ?」 おじさんは、僕の気持ちが分かってるみたい。 やっぱりモテるのはこういう所があるからなんだろうなぁ。 おじさんは本当に自慢の恋人だ。 どう? カッコイイし優しいし、頭もいいんだもん。 良いでしょ~。 なんだか得意気な気持ちになった。 「エヘヘ…」 ついつい笑みが溢れると、おじさんが首を傾げた。 「何。どうした?」 「な~んでもな~い」 なんだか周りの視線なんて気にならなくなった。 映画楽しむぞ! あ。そういえば…。 「え~っと」 スマホを取り出して、お母さんにtalkを送る。 《今日は帰りに海里おじさんが迎えに来てくれたので、映画を観て帰ります》 帰って来ないって心配させたらいけないもんね。 「結斗。晩ごはんも食べて帰ろう」 「う、うん…!」 益々、デートっぽいかも! 「あ。でも、おじさんは家大丈夫なの?」 おばさんが晩ごはんを作って待ってるかもしれない。 それなのに、僕と一緒に映画を観て晩ごはんを食べて帰るって訳にはいかなくなるもんね…。 その考えに行き着いて、さっきまでの気持ちが嘘の様に下降する。 「大丈夫。今夜も遅いって連絡貰ってるから」 「…本当に?」 良かった…。それなら一緒に居てもいいもんね。 「だったら僕もお母さんに、ご飯食べて帰るって連絡しとくね」 《ご飯も食べて帰るから、お母さんも自分で宜しくお願いします(^^)/》 これでよし、と。 嬉しい、嬉しいなぁ。 「嬉しそうだね、結斗。この映画、前から観たがってたからね」 僕が今喜んでる理由とは違うけど、嬉しい事には変わりないから、まぁいいか。 それにしても 早く始まらないかなぁ~。 あ、忘れてた。 始まる前にトイレに行っとこう。 「おじさん、僕トイレ行ってくるね」 「あぁ。出て右行った所にあったぞ。迷子になるなよ」 おじさんが意地悪な顔で笑った。 僕が方向音痴だと思って、からかうんだから~! 「迷子になんて、ならないよっ!」 僕は口を尖らせて立ち上がると、カップルシートの間を抜けて一般席を通り過ぎて開きっぱなしのドアから出た。 まだ始まらないと思うけど急ぎ足で、トイレに向かう。 他のお客さんも足早に各々入って行く。 僕の他には、通路に誰も居ない。 「急がないとっ」 入れ代わりにトイレから男の人が出て行く。 中には誰も居なくて、綺麗なトイレも少し怖い。 BGMなのか映画の曲が小さく流れている。 僕が買って貰ったズボンのボタンを外していると、人が入って来た。 良かった~ひとりじゃなくて。 怖がりの僕は、ホッと安堵すると隣の人と同じ様に前を開いた。

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