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第89話 ちょっと休憩
チェックインを済ませたおじさんと一緒に、ホテルの人に着いてエレベーターへ向かう。
ホテルのロビーをフカフカの絨毯が敷かれていて、見上げると大きなシャンデリアが幾つも下がっていた。
そのシャンデリアの光を受けて、日本式の細工をされた天井や壁も心地好い雰囲気を醸し出していた。
和洋の良いところを上手く引き出していると思う。
おじさんみたいだなぁ。
おじさんの容姿も和と洋の良いとこ取りだもんね。
そんなホテルには日本人も居るけど、外国からのお客さんも多いみたい。
擦れ違う人の雰囲気に圧倒されつつ、必死におじさんの隣を歩く。
エレベーターの前に着き、静かに乗り込む。
この人、偉い人だよね?
ホテルの人を見ながら、ふと思う。
普通はベルボーイさんとかが、案内してくれると思うけど…違うのかな?
エレベーターが止まる。
ドアが開き促されて降りると、そこには又々縁の無さそうな高級感溢れるフロアが広がっていた。
ここの絨毯もフカフカだけど、やっぱり歩きやすい。
フロアに大きなソファが置いてあり、テーブルに彫像や生花まで飾ってあった。
やっぱり上にはシャンデリア。
眩しい。
白い空間は、ここが現実というのを忘れさせてくれるみたい。
何、ここ?
少し歩いた真正面には細工を綺麗に施されたドアがひとつ。
「結斗。ほら入って」
ホテルの人がドアを恭しく開けてくれると、おじさんが驚く僕を可笑しそうに見ながら促してくる。
「う、うん…」
ハテナだらけなまま、一番に室内へと通される。
「わぁぁ~!」
入って短い廊下を進んで直ぐを左に向かうと、思わず声が上がった。
大きく開いた窓の向こうには、驚くほどに煌びやかな夜景が広がっていたからだ。
思わず窓際に駆け寄る。
だけど、近づくと余りの高さに怖すぎて少し間を空けて立った。
「キラキラしてる!スゴい!!」
高層ビルの窓明かりや車のライトが、まるで宝石の様だった。
宝石に例える意味が漸く分かった。
「こんな凄いホテル初めてだよ!」
「それは良かった」
隣に並んできたおじさんが、嬉しそうな声と共に僕の頭へチュッとキスした。
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