91 / 131
第91話 ただのおじさん
脱げと言われて慌ててリボンに手を伸ばしたら、大きな手に阻まれた。
これじゃぁ僕、服が脱げないんだけど。
「おじさん?」
何してるの、どうしたの、と思いながら見つめる。
「俺が脱がしてあげる」
好い人っぽい顔でそう言った。
「いや、いいよ。急いだ方がいいなら自分で脱ぐから、おじさんも自分の服脱いだら?」
夕食迄にクリーニングを終えなくちゃダメなら急いだ方がいいと思う。
お互い、さっさと脱いだら早いと思うけど。
「いや、俺は直ぐに脱げるから問題ない」
「僕も直ぐに脱げるから大丈夫だけど」
僕がそう言いながら、おじさんの手を退かせると直ぐに元の位置に戻ってきた。
「いいから、もうっ」
「…」
「…」
「…」
「…ッ?」
「俺が脱がせたいのー!!」
繰り返された攻防の挙げ句、おじさんの本音が漏れた。
「は?」
「結斗の服を俺が自分の手で脱がせたいんだ!」
本音が漏れたというか、叫んだ。
「な、何で…?」
理解出来なくて首を傾げると、子どもっぽい表情を浮かべた海里おじさんが視線を逸らしながら答える。
「自分の手で脱がしていくことで少しずつ露になる結斗の肌をドキドキしながら目で味わいたい」
目で味わいたい?
「それに、脱がされる恥ずかしさにホッペを赤く染める結斗の顔を見たい」
おじさん…真剣だ。
「脱がしたい。脱がさせて、結斗。お願い…」
情けない顔で懇願してくる。
そこまでして服を脱がせたい意味が分かんない。
「結斗…」
「…えぇっ、とぉ~…」
どうしようか…。
イケメンな海里おじさんなんてそこには居なくて、ただのエッチなおじさんが居ました…。
ともだちにシェアしよう!