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第103話 腐れ縁
現れた男の人は、僕が座っているからかとても大きく見えた。
実際に背は高いんだと思う。
おじさんと比べると背丈は同じ位だと思うけど、少し筋肉質な感じがする。
黒のフォーマルなスーツを隙なく着こなしていて、仕事をしている時のおじさんみたいに黒い髪の毛をセットしている。
その様子は仕事の出来る男といった感じだ。
顔は涼やかな二重の目に、高い鼻梁、日本人としては彫りの深い顔をしている。
整った顔で、ジッと見られると圧倒される。
和洋の良いとこ取りな甘い顔で全体的に海里おじさんが『柔』なら、この人は『剛』だと思う。
「榊(さかき)、あんまり見るな。結斗が減る」
おじさんが不機嫌に言うと、男の人がアハハッと面白そうに笑った。
「なんだ、それ?この子は見てたら減るのか。なら、見てやろう!」
楽しそうに笑ってその人が僕へとズイッと近づくと、直ぐに後ろへと引っ込む。
「おおっ?!」
「近すぎる。見すぎるな!」
おじさんが榊さんの後ろ襟を掴んで、引っ張っていた。
「あっぶねぇな~。転ぶ所だった」
「知るか。お前が悪いんだろうが。結斗を見るな。お前の毒素に汚される!」
二人が並ぶと背の高さは同じだった。
睨み付けるおじさんに、榊さんはヘラヘラ笑う。
「毒素~?それを言うならお前もだろうが、この歩く種馬め」
た、種馬?
確かにおじさんはモテるから、過去にはそれなりに女性経験豊富だろうけど…いやだなぁ、その表現。
僕がげんなりしていると、おじさんが苦々しく顔を顰める。
「お前はどうだよ、この歩くワイセツ物め」
それはもっとイヤかも~ッ。
ついつい猥褻物を見るような視線で榊さんを見てしまった。
何がどう猥褻物なんだろうか…。
そんな視線に気がついたのか、榊さんがこっちへと顔を向けた。
「俺は猥褻物じゃないからね~?誤解しないで~!!」
ちょっと情けない顔で笑っていた。
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