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第105話 美味しい料理

それから直ぐに僕たちの前に料理が運ばれて来た。 オードブルはテリーヌでとても色鮮やかで、照明の下ではキラキラと煌めいている。 ひとくち食べただけで、口に旨味っていうのかな?広がる。 「お、美味しい!」 「フフッ」 素直な感想に、おじさんが優しく笑う。 「サラダでございます」と、緑の鮮やかなサラダが目の前に置かれる。 何だか僕の見たことのない葉っぱも多く、ちょびちょびと口へと運ぶ。 あんまりサラダは好きじゃない。だけど、このサラダはドレッシングも好みで次から次へと口へ入れていった。 思わずおかわりを求めそうになってしまった位。 あんまりにも表情に出ていたのか、おじさんが「おかわりするか?」なんて冗談を言った位だから。 まさか、こんな所でおかわりなんてしないよ~もうっ!! それにしても、おじさんは所作がなっていてスマートでカッコイイ。 思わず見惚れてしまう。 長い指が動く様は、優雅だった。 「結斗。どうしたの?ぼんやりして」 「えっ、ううん。何でもないよ。本当に美味しいね!」 おじさんは嬉しそうに頷いた。 「ここの料理長は、アイツが別の店からヘッドハントしてきてな。腕は確かだったが、ホテルに自分の店を出せるとなって本人が力を発揮した結果が今の味だ。3つ星獲得したのも、いい舞台があったからこそだよ」 「へぇ、そうなんだ。元々は違うお店に居たのを榊さんがこのホテルに引き抜いてきたって事なんだね」 「榊の人を見る目は確かだし、ここの料理長の腕も確かだよ」 おじさんの口調は生き生きとしていて、話に出た二人への信頼を感じた。 僕も陽くんと、今以上に信頼出来る関係になれたらいいなぁと思った。 サラダを食べ終わり、カトラリーを置きながら次を待つ。 初めはドキドキしていたカトラリーの順番も、おじさんを見ながらすればいいから大丈夫だった。 食べ終わった後の置き方も真似っこ、真似っこ。 次は何かな~?と思っていたら、コンソメスープが出された。 ただのコンソメスープと侮ってはダメだった。 わぁっ!これも美味しい。普通のと違う。 こんな美味しいスープをおじさんはいつも飲んでるんだ…僕の作るスープなんて月とすっぽん。色々研究して美味しいスープを飲ませてあげよう!と、僕は舌に集中した。

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