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第108話 プレゼント

美味しいご飯を食べて、綺麗な夜景とおじさんの笑顔に大満足な僕は夢心地で店を後にした。 エレベーターに乗って着いた先は、さっき案内された部屋の階。 エレベーターのドアが開くと一瞬目映さに目が眩みそうになる。 豪華だなぁ~。 そう思うと榊さんって本当に改めて凄いんだと思う。 このホテルを所有してるなんて、相当敏腕に違いない。 各国からのVIPを迎える側なんだから、頭の回転も早くて仕事もテキパキとこなすんだろう。 「榊さんって、凄いんだねぇ」 僕は本当に何気なく言ったつもりだった。 別に榊さん自身に何か特別な感情を持ったわけでも、ましてや海里おじさんと比べたつもりも無い。 それなのに、おじさんは…。 「榊なんて大した事ない。結斗、榊なんてなぁ学生時代なんて、」 何だかブツブツ言い始める。 榊さんにライバル心でもあるのかな? 「おじさんってば、そんな風に言って~もうっ!榊さんは凄いよ?」 「結斗!榊、榊って、まさか榊に一目惚れとかしたんじゃないだろうな?!」 なんて検討違いな事まで言い始める始末。 勘違いも甚だしい。 「そんな訳ないでしょ?素直に凄いんだなって思っただけだよ」 「恋人と居るのに他の男を褒めるなんて」 あ~ッ、もうっ!! 何だかおじさん、しつこいよ? 思わず言いそうになったセリフは口からは出なかった。 僕の視線がある物を見つけてしまったからだ。 「あっ、これ榊さんからだ!!」 部屋のあるフロアの豪奢なテーブルには、食事に行く前には無かったプレゼントが置いてあり、 『素敵な夜をお過ごし下さい 榊』 と、カードに書いてあった。 「中身は何だろう?あれ?!」 僕が嬉しくて箱を持ち上げると、その側にはラッピングされた綺麗な袋が置かれていた。 カードには『近江へ』となっていた。 「しかもひとつは、おじさん宛にあるよ?!」 プレゼントに嬉しくなった僕は袋を手にして、おじさんに手渡した。 「フフフッ。榊のヤツ…やっぱり分かってるなぁ~」 受け取って直ぐに、おじさんは嬉しそうに口元を緩めている。 二人とも仲良しなんだ。 羨ましい気持ちが生まれてきたのと同時に、心を許せる親友が居るのっていいなぁと思った。 僕と翔は親友じゃないけど、まぁ仲が悪くもなく…幼馴染みとして上手くやってると思う。 僕はもっと一緒に遊んだりしたかったけど、翔とは趣味も遊び方も考え方から違うから仕方無い。 そういう相手というと、学校以外ではなかなか会えないし部活とかで遊べないけど陽くんが親友と呼べる存在だと思う。 陽くんもそう思ってくれてるはず。 陽くん今、何してるのかな? 今度、今日の事を話しよう…! 豪華な夜ご飯にホテルと、おじさんの知り合いがホテルの経営をしてるって、きっと驚くよね。 密かにワクワクしていたら、おじさんに室内に入るように促された。 「結斗、中で」 「あ、そうだよね。中で開けてみようよ!何が入ってるのか楽しみだね」 僕が笑うと、おじさんもニコッと笑って紙袋を持ち上げてみせた。 僕も箱を持って、おじさんにドアを開けて貰った室内へと入った。

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