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第109話 お願い事

室内へと入ると、プレゼントの箱をさっそく開けてみる。 一体何だろ? 次に榊さんに会ったときに、お礼を言わなくちゃいけないからね。 僕はソファに座ると、さっそくプレゼントの包装を解いて箱を開けてみた。 「わぁっ!!カワイイ!」 箱の中には、黒い猫の小さなヌイグルミが入っていた。 僕は動物も好きだし、ヌイグルミも可愛くて小さい頃から好きで、部屋にも両親や海里おじさんからのプレゼントで沢山置いてある。 男らしくないし、いい歳をしてヌイグルミもどうかと思うけどカワイイから仕方無い。 あの目で見つめられたら、堪らなくて。 とにかく、ヌイグルミが好きってことで。 「あれ?」 ヌイグルミの周りにあった梱包材の下にも何かが入っているみたいだ。 ガサゴソと探って出てきたものは…。 「…これって」 手にしてみても、やっぱりコレはアレだよね? 僕は手にしたソレを目の高さまで持ち上げてみる。 「耳が付いてる」 どう見ても黒猫の耳が付いている。 「僕、女の子に見えたのかな…?」 いやいやいや、そんな訳がない。 僕、どこからどう見ても男だと思う。 だけど、何で? 「これって、カチューシャ…だよね」 そうなんだ。 榊さんから貰ったプレゼントは、何故かカチューシャで、しかも猫耳が付いていたんだ。 「結斗。せっかく貰ったんだから付けてみなさい」 「…」 おじさんの顔が真面目だった。 「でもこれ。女の子の使う」 「結斗。今日は初めてのデートだから記念に付けてみなさい」 「……」 「結斗、一回でいいから付けてみてくれ!」 「えっ、嫌だよ。だって、絶対に似合わないし。恥ずかしいもんっ」 抵抗を示したけど、おじさんは諦めてくれない。 「嫌だよ、本当に」 「…初デート記念に、付けてみて欲しい」 おじさんの顔が少し悲しそうに見えた。 よく考えたら、僕は人生初めてのデート。 恋人同士って、こういうお願い事とかしあったりするのかな? よく分からない。 それに今日は服も買って貰ったし、美味しいご飯を食べさせて貰った。 だから、これくらいのお願い事は聞いてあげなくちゃ、だよね。 「分かったよ。コレ付けてみる」 僕がカチューシャをもう一度示すと、おじさんの顔がパッと明るくなった。 それだけで、ただでさえカッコイイ顔がまた眩しくなった。

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