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第114話 窓

力なく階段を上がった。 二階に僕の部屋があって、ドアを開けると直ぐにエアコンを操作して冷房をかける。 そして手にしていたプレゼントを持ったままベッドへ倒れ込むように寝転がった。 「はーっ…」 思わず出てしまった溜め息に、余計に頭がモヤモヤ。 手から離してしまったプレゼントの箱を見つめる。 「…」 取り出した猫のぬいぐるみを胸の上に置いて見つめ話しかけた。 「今日は初めてのデートだったんだよ…。楽しかったぁ…」 言いたくても誰にも言えない。 さっきもどれだけ、お母さんに話たかったか仕方無くて。 でも、おじさんとデートだなんて話せるわけもなくて、溜め息が出てしまう。 こんな事は、前にもあった気がする。 「…おじさんとエッチな事をした時だ」 そう。 それをお母さんに言おうとした事もあったと思い出す。 結局相談なんてもってのほかで、出来ずじまい。 悶々とした挙げ句の、いや。 相談しなかったから今、僕とおじさんがこうして付き合ってるんだから結果としては良かったんだ。 デートなんて初めてだったから、全然どういう風なものか分からなかった。 マンガやドラマでしか見たことなくて。 だけど、全然想像やドラマとは違った。 それは、大好きなおじさんと一緒だったからだと思う。 嬉しくて、楽しくて、本当にドキドキとワクワクに満ちていた。 だけど、最後に予想外の結末が待っていて。 僕は本当に、おじいちゃんの事を心配してるんだ。 …ただ。今日という日でなくてもと思ってしまったのも事実だった。 本当にごめんなさい。 翔のおじいちゃんが元気になりますように…。 僕はベッドの上に起き上がると、横の窓を開けて空を見上げた。 空には夏の大三角が煌めいていた。 室内のエアコンとは違って、生温い空気が入ってくる。 僕は手を組んで空の神様へと祈った。 その時、ガーッとガレージの音が夜闇に響く。 そちらを見れば、隣のおじさんの家から車が出てくる。 これから、おばさんを迎えに行くんだろう。 家族3人で大変な状態になっている、おじいちゃんの所へ向かう為に、車は住宅街の夜道をヘッドライトで照らして行ってしまう。 「おじさん…」 寂しくなってきて、僕は呟いた。

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