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第115話 非日常

あれからタオルケットにくるまって猫のぬいぐるみを握り締めて寝た僕は、お母さんの声で目が覚めた。 着替えを済ませて学校用の鞄を手にして、リビングに顔を出す。 「目覚まし時計のアラームかけてなかったの?」 「…うん」 昨日の夜は、そんな事頭にも無くて寝てしまっていた。 僕が頷く横で、お母さんは忙しそうにバタバタしている。 「もう時間だから、お母さん出るわね!結斗も気をつけて学校に行くのよ?!」 「大丈夫だよ。お母さんも気をつけてね」 玄関まで送りに出ると、お母さんがニッコリ笑って軽く抱き締めてくれる。 いい年になっても、やっぱりお母さんが好きだから、子ども心に嬉しいと思う。 「行ってきます」 「いってらっしゃい!」 元気に見送って、僕は自分の準備に取りかかる事にした。 お母さんが用意してくれた朝ご飯を食べる。 朝食の場合、僕が作るときは和食が多いけど、お母さんが作る時は殆ど洋食だった。 夜も遅く朝も早目のお母さんは、時間に余裕があんまり無いから手早く作れる物で、となるとトーストにスクランブルエッグ等が定番となっている。 「いただきます」 ひとりテーブルに向かい座って食べる。 テレビをつけて今日の天気や昨日あったニュースや時間を確認しながら、お腹 を満たしていく。 いつもは「へぇ~そうなんだ」と思ったりしている話題も頭に入ってこない。 ただ画面を何となく見つめているだけ。 テーブルに置いているスマホを見るけど、特別メールもtalkも何も無い。 おじさん、もう向こうに着いたのかな…? 確か、おじさんは東京の出身で実家は閑静な高級住宅街として有名な所。 お盆にお正月にと顔を出しては、大きな家で全員揃って写真を撮っていた様だ。 落ち着いたおじいちゃん、おばあちゃんと一緒にソファに座って笑っている翔の姿があった。 おばさんの出身は北海道だったはず。 中学生になるまでは毎年お正月に「おじいちゃんの家へ行ってくる」と翔が家族揃って行っていた。 帰ってきては雪だるまを作ったり、スキーをしている写真を見せてくれた。 満面の笑みの翔と側でスキーウェアに身を包んだおじさんの写真に良いなぁと思っていた。 僕は広島のおじいちゃんの家へお盆に行ってはお墓参りに親戚と顔を合わせて歳上の従兄弟達とひたすら遊ぶ。 お正月にはおせち料理を食べて親戚と顔を合わせて歳上の従兄弟達とひたすら遊ぶ。例外なくそれが定番で。 近くのデパートで1000円までのオモチャを買ってもらって、ゲームセンターで500円迄で遊ばせてもらっていた。 たまに球場でシャークの応援。 それが楽しみだった。 なので、毎年聞かされて写真を見させられた翔の非日常な様子が羨ましかった。

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