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第116話 登校
そんな非日常を今回も経験している翔が、正直羨ましい。
本当はそんな事を思ってはいけない時だし、事情が事情なだけに不謹慎だ。
だけど、僕は海里おじさんと一緒に居るというだけで羨ましくて仕方がなかった。
家族。
それは分かっているけど、どうしても割り込めない場所が僕の嫉妬を焚き付けているみたいだった。
それに、連絡がないから尚更だった。
「…おじさん今、何してるのかな」
僕から連絡というのは迷惑に違いない。
悶々としたモノを抱えながら僕は登校の準備を進めた。
いつもよりほんの少し遅く家を出る。
ぼやぼやしながら駅へと辿り着く。
ホームへ向かう足取りも覇気がなくて、溜め息も何度かついてしまった。
「こんなんじゃ、ダメ人間になっちゃいそうだ」
おじさんと永遠の別れでも何でもないのに、この状態。
この先こんなことは沢山あるはずだし、そうしたら僕はどうするつもりなんだ。
しっかりしろ、僕!
「よぉ…」
なんてひとり意気込んでいたら、背後から低い艶のある声が掛けられた。
「お、おはよ~国見くん」
そこには、昨日おかしな別れ方をした国見くんが立っていた。
背の高い国見くんは、まだ眠たいのかアクビをかみ殺す。
そんな姿も男前で、カッコいいと思ってしまう。
「国見くんは、いつもこの時間なの?」
僕が訊くと国見くんは首筋をポリポリさせながら答える。
「まぁ、大抵この時間かな。遅刻しないギリ…」
見た目少し不良っぽいのに、授業をきちんと受けているから益々好感が持てる。
そんな所も女子からの人気が高い理由なんだろうなぁ。
僕がそんな事を思いながら見ていると、国見くんが困った顔をした。
「っ、あんまこっち見んな」
そう言いながら僕の頭を押して遠ざける。
「何でッ!?」
納得いかない僕は唇を尖らせる。
それから国見くんをわざと、じ~っと見てやった。
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