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第117話 紛れない気持ち

「だから見んなってんだよ、この…っ!」 バチっ! 「イ…っ!!」 国見くんに、とうとうデコピンを喰らってしまった。 軽いつもりだろうけど、体格の良い国見くんにされると痛さもハンパない。 痛くて赤くなっているだろう額を両手で押さえていると、国見くんが頭をぐしゃぐしゃしてきた。 「痛かったか?」 「い、痛いよ、もう~」 僕が涙目で見上げると、国見くんが眉をしんなりさせた。 「悪ぃ…。強くしたつもりはなかったんだがな」 「いいよぉ~もう。大丈夫だから」 そう言いながら、やっぱり痛かったので数回撫でてから手を下ろした。 あんまりやっていると、国見くんが気にしてしまう。 そうして二人並んで駅構内へと入る。 こうしているだけでも国見くんは視線を受ける。 背が高いし、イケメンだし。 隣の僕が良い引き立て役だよね、本当に。 「…」 背が高くてイケメンで、二人並んでという構図はどうしても海里おじさんを思い出しちゃうから、ついつい見たばかりのスマホをまた確認してしまう。 おじさんからの連絡はやっぱり無い。 「はぁっ…」 溜め息ばかりつくと、幸せが逃げるっていうもんね…。 僕は慌てて口を手のひらで押さえた。 「…悩みか?」 国見くんが心配してくれる。 見上げるとジッと見詰められていて、視線の強さにドキッとした。 「いや…。別に、大丈夫」 「…そうか」 それから二人静かにホームで電車を待った。

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