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第121話 過程

授業を終え二時間目までの休憩になった。 僕は直ぐに陽くんの席へと向かった。 だって、陽くんと翔がいつの間にか仲良くなってたから。 ちっとも知らなかった。 「陽くん、不良とか遊び人っぽい派手な人苦手じゃなかったっけ?それの代名詞な翔と何で?いつからやり取りしてるの?」 僕も苦手だけど、翔という幼なじみのお陰で多少は免疫が出来た。 とはいえ、翔とその友人くらいだけど。 そんな僕と同じく陽くんも苦手としているのが、派手な人たち。 食堂で一緒になった時もビクビクしてたような…? 「食堂で一緒になったでしょ?」 え。そう、その時がきっかけなの? 「あの時、近江くんと少し一緒に居たんだけど」 陽くんが溜め息をつく。 「特に仲良くなったとかじゃないんだよ。僕はビビりだからさ~なるべく関わりたくなくて最低限しか話しなかったし」 「それが何で?」 僕が首を捻ると同じ様に陽くんも頭を傾げた。 「分かんない」 表情からして本当に分からないらしい。 「それから廊下とかで声掛けられたり、部活の途中に側を通ったとかで構ってきてさ…。気がついたらスマホ奪われて、連絡先を無理矢理交換させられてたんだよね…」 翔、強引だ。 「それは何だか災難だったね…。陽くんの苦手なタイプだし」 「そうっ、そうなんだよ~‼勝手だし、強引だし、派手なせいで僕まで目立って部活とかで恥ずかしかったし‼」 「わ、分かる~‼その気持ち‼」 僕もおじさんと一緒に居ると、嫌でも経験するもん。 まぁ、翔みたいに勝手も強引も今では思いが通じあったからか、おじさんは大人対応だから安心して身を任せられる。 あっ、今は翔の話だった。 ついつい、おじさんの事に思考が向いちゃうな。 「しかも連絡無視したら許さないとか、すんごい怖い顔で凄まれて…目で殺されるかと思った‼」 既に陽くんが涙目だ。 翔の整った顔で凄まれたら相当怖いと思う。 海里おじさんも普段女の子が失神しそうなほど甘い顔してるけど、怒ると目だけで本当に人を殺せる程なんだよね…。 僕は向けられてないんだけど、前に見たことが一度だけあった。 たしか僕が中学生の時に、おじさんと待ち合わせをしていた時だったかも。 急に隣に立った男の人が、僕に声を掛けてきた。 待ち合わせをしているからと言っても、なかなか離れてくれなくて困っていた。 すると、待ち合わせに現れた海里おじさんが…。 うん。 はい。 正直、怖かったです…。 そんな人の子どもだから、翔も相当な怖い顔で陽くんを…。 陽くんの寿命が縮んでないといいんだけど。 ちらりと見た陽くんは、疲れた表情でスマホを見つめていた。 「何で僕に…?」 そして、そう呟いていた。

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