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第126話 気になる名前
国見くんと歩きながら昇降口を目指す。
放課後だから廊下に居る人は、まばらだ。
どこか遠くから運動部の掛け声や教室に残っているのだろうか、女子の楽しそうな笑い声が聞こえてきた。
国見くんと並んで歩くのにも慣れたなぁと思いながら、声を掛けた。
「そういえば、翔といつからの友達なの?」
僕がそう訊くと、国見くんは首を傾げた。
「んぁ?友達って、なんか…まぁいいけど。ん…高校入って直ぐだな」
「そうなんだ⁉知らなかった。どうやって友達になったの?」
そこが知りたい‼
不良っぽい翔と国見くん…どういう経緯で知り合ったのかな?
丁度下駄箱に辿り着いたので、靴に履き替えた。
のろのろな僕を待ってくれた国見くんと、再び歩きながら話をする。
空は、まだまだ明るい。
「…まぁ、その…サボリ仲間だ」
え?
サボリ仲間…?
「…だから言いたくなかったんだよな」
国見くんが顔を顰める。
「あぁっ‼だから友達じゃないって言ってたんだ」
前に翔が言っていたことを思い出す。
仲間か。
それもサボリ仲間だなんて、そりゃぁ恥ずかしいかも。
だって、カッコよくないもんね。
僕が思わず笑ってしまうと、国見くんに「うるさい」と言われてしまった。
でも、笑わずにいられなかったから許して欲しいし。
それにしても全然想像と違った。
何かドラマチックな展開を期待していたのに。
「友達ってのもなんだけど、近江とは気も合うからな…」
「ふぅ~ん、そっかぁ。ん?そういえば国見くん翔の事、苗字で呼ぶんだね?」
僕がそう疑問を口にすると、国見くんが「出会い方が出会い方で…」と教えてくれた。
サボリとして鉢合わせ、そこへ先生がやって来たんだって。
その時に先生が二人の名前を呼んだらしい。
「近江、国見‼堂々とサボリか~⁉」って怒りながら。
「で、お互いに名前をそれで知ったからな。で、次に会ったときに『確か…』ってな」
「なるほど~。そうだったんだね」
お喋りしているとあっという間に、門は直ぐそこ
だ。
あんなに落ちていた気持ちも持ち直していた。
不思議だなぁ。
僕、ひょっとして新しい友達に浮かれているのかもしれない。
友達…って僕が勝手に思ってるだけだけどね。
「あっ、そうだ。国見くん」
「何だよ」
「下の名前、教えてよ」
「何でだよ?」
何でって言われると困る。
話の流れから下の名前が、どうしても気になったからだ。
「…し、知りたいからじゃ、ダメ…?」
思わず俯きかけた。
だって、切り返しがキツいんだもん。
僕、打たれ弱いから優しくOKして欲しかった。
でも勇気を出して、チラリと見上げた。
すると、国見くんが慌てて前を向いた。
「…じ」
「?」
よく聞こえなくて首を傾げながら、もう一度訊いてみる。
「蓮司…ってんだよ、ちゃんと聴けよな」
国見蓮司って言うんだ。
うん、名前までカッコいい‼
「カッコいい名前だね!国見くんに似合ってるよ‼」
そう言った僕に国見くんが立ち止まって顔を見下ろしてきた。
こうしてみると、僕と国見くんの体格の差がよく分かる。
「…」
「…どうしたの?」
見つめてくる時間が長くなって、僕が国見くんに問い掛ける。
「下の名前訊いたからには、おまえ…」
「何?」
国見くんが一呼吸置いた。
「俺の事は、今度から下の名前で呼べよな」
下の名前で呼ぶの?
急になんで??
そんな疑問には一切スルーで、国見くんが少し笑った。
「俺も下の名前で呼ぶから…」
「へ?」
キョトンとする僕の鼻をキュムッと摘まみながら、国見くんが言った。
「結斗…」
国見くんの顔はキリッと隙がない。
それが、この時は優しく見えたんだ。
「く、国見くんっ⁉」
「蓮司、っつたよな?」
「痛っ⁉」
またまたデコピン。
僕はおでこをサスサスしながら、目の前の乱暴者を見上げた。
「蓮、司、くん…」
僕が慣れない名前を呼ぶと、国見…、蓮司くんはフッと小さく笑って歩き出した。
「…?」
その後に続きながら、今まで居たのとは違うタイプの新しい友達が出来たなぁと思った。
☆☆☆☆☆
Twitter企画にご参加下さり、ありがとうございました‼
お読みになられた通り、国見くんの名前は『蓮司』に決定致しました。
どれも棄てがたかった名前…誰かに何処かで使いたいと思っております。
もしもお見かけの際には、あの時の…と、ニヤリとして下さいませ!
短編も投票にて次回内容が決定しましたので、更新までお楽しみに~♪
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