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第128話 また今度

綺麗なおじさんの指が目尻を拭い終わって、ふたりでニコッと笑いあった時だった。 「おい」 僕たちの熱い再会は、不機嫌そうな低い声で遮られた。 「何してる?…誰だ?」 僕はその声に我に返ると、慌てて顔を横へと向けた。 そこには長身をドドンと構えて、高校生にしては貫禄ある立ち姿の蓮司くんが居た。 「あ、蓮司くんっ‼」 海里おじさんとの久々の再会に有頂天になっていた僕は、すっかり頭の中から蓮司くんの存在を忘れてしまっていた。 「結斗。その人、誰?」 到底、歳上に向ける声ではなくて…顔もちょっと睨む感じだった。 どうしたんだろう、蓮司くん。 あっ、そうか‼ 僕が急に離れて海里おじさんと話始めたから、訳が分からなくて怒ってるのかも⁉ これはいけないと思い僕が答えようとすると、今度は直ぐ側から声がした。 「…結斗。アイツ誰?」 僕の耳へ辛うじて届く程度の声。 だけど、不機嫌さは伝わってくる。 チラッと僕がおじさんを見ると、表情は優しい。 けれども視線は蓮司くんを見てる。 「同級生の蓮司くん。あっ‼翔の友、…仲間なんだって‼たまたま一緒になったから蓮司くんと帰ろうかと思ってたんだ」 僕が説明すると、海里おじさんは「そうか」とだけ言った。 「おじさん?」 海里おじさんは僕に合わせていた背筋をスッと伸ばすと、蓮司くんの方へと歩いていく。 一体何だろうかと思って見ていると、蓮司くんの前で立ち止まる。 若干、おじさんの方が背が高い。 長身のふたりが並ぶと凄い迫力だ。 「結斗の新しい友達かい?今日は申し訳ないが、結斗は私と一緒に帰ることになったから君はひとりで帰ってくれ。すまないね」 僕からおじさんの表情は見えなかったけれど、そう言って振り返った顔は微笑んでいたのでホッとした。 だって一瞬、蓮司くんの表情が強張って見えたから…。 喧嘩とかするはずないのに。 相手は高校生だし、おじさんは大人なんだから。 僕は自分のおかしな想像にクスリと、笑ってしまった。 「結斗、待たせたな。さぁ、帰ろうか」 おじさんに肩を抱かれて、近くに停めていた車へと促される。 「あっ‼」 僕は蓮司くんの方を見た。 そこには、こちらをじっと見ていた彼が居た。 「蓮司くん、ごめんね!また今度一緒に帰ろうね‼」 そう言って手を振ると、蓮司くんも笑って手を振り返してくれた。 それから僕は車に乗り込むと、おじさんと一緒に家路へとついたのだった。

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