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第41話 忘れていたこと
翔に言われて、一体今は何時かと時計を確認する。
見れば針は天辺を指している。
「えっ、もう夜の十二時なの!?」
「はっ!?昼だよ、ひる~!」
えっ!お昼?僕、昼まで寝てたの?
「だから腹減ったろ?」
そう言われると、そんな気がしてくるから不思議だ。
僕は早速ベッドへ起き上がろうとしたんだけど、無理だった。
おじさんとのセックスで無理な体勢をしていた事もあってか、アチコチが痛い。
激痛まではいかないまでも、動かすことが辛い。
受け入れた場所も違和感が…。
「おいおい、大丈夫か。起き上がれないのか?」
僕の様子に驚いた様子で翔が駆け寄る。
正直大丈夫じゃないけど、ここで起きないと怪しまれるかも。
どうしようと悩んでいると、ドアが開けられた。
「翔、降りてご飯を食べなさい」
そこには海里おじさんがお盆を手にして立っていた。
「オヤジ、結斗が…」
「結斗はここでゆっくり食べるといいよ。ほら、ご飯を持ってきたから」
おじさんは、ご飯の載ったお盆をベッドサイドの台に置いた。
「結斗、気分はどう?」
節々が痛い以外は、すっきりしている。
よく眠ったからかな?
「うん。大丈夫…だけど」
体が痛いんだけど、それは言わなくても分かってるといった風に、おじさんは僕の目を見ながら頷いた。
「さぁ、俺の腕に体重預けていいから」
ベッドの横に座ると、僕の背中に腕を差し入れ優しく抱き起こしてくれた。
おじさんが心配そうに頭から頬をそっと撫でてくれる。
大きな掌が僕の顔を包む。
やっぱりこの手が一番安心するなぁ…。
「よし。ご飯作ったから食べよう。お腹が空いただろう?」
「うん。…これ、おじさんが作ってくれたの?」
おじさんの差し出したお盆には、ほかほかご飯とお味噌汁、ちょっと焦げて形の崩れた卵焼き。
「…失敗したけど、まぁ…食べられるから」
クスッ
思わず笑ってしまった。
だって、そう言ったおじさんの顔が何だか可愛かったから。
「それじゃぁ、いただきます」
「どうぞ」
だけど、食べようと伸ばした箸を先に取り上げられる。
「ほら、口開けて」
それって、もしかして…?
「あーん、して?」
やっぱり!?
「は、恥ずかしいよ…」
「結斗」
おじさんが卵焼きをズイッと近づける。
抵抗しても諦めない顔をしているから、仕方無く口を開けたけど、僕は恥ずかしいから目を閉じた。
「…あーん」
パクッ モグモグ、ゴクン
「美味しい…」
「良かった。ゆっくり食べたらいいからな」
こんなに優しくされたら困る。
「次は何が食べたい?」
「…ご飯」
翔の出現と美味しいご飯のお陰で、おじさんとどんな顔で会ってどんな風に何を話すればいいのかと悩んだのも忘れていた。
そしてもうひとつ、忘れていた…。
「…どこのバカップルだよ」
翔が少し離れた場所から白けた顔で僕らを見ていた。
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