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第44話 呼び方注意

あれから暫くして眠っていたらしい。 僕が目覚めると、夜になっていて、仄かに間接照明が室内を照らしていた。 「んんっ。よく寝た」 沢山寝たからか、体の怠さとアソコの痛みも和らいだ。 これなら大丈夫そうだ。 時計を確認すると、もう夜中だった。 「お腹空いたな…」 側に置かれていた水を飲んだけど、これでは空腹は満たせない。 僕は少し軋む体を動かして、ベッドを降りる。 それからドアを開けて、階下へと静かに降りていった。 リビングまで来ると、中から灯りが漏れている。 僕の影がグーンと廊下へと伸びる。 「…おじさん」 家中静まり返っている。 だけど、何故か分かっていた。 リビングにおじさんが居るって。 何でだろう? 僕の声に振り返ったおじさんが、両腕を広げて迎え入れてくれる。 ぎゅっと抱き締められる。 「体調はどう?」 「ん…もう大丈夫」 おじさんの体臭をいっぱいに吸い込んでしまうともうダメだ。 落ち着く~。 「どうしたの?昼寝たくさんしたから眠れなくなったの?」 聞かれて首を左右に振る。 「お腹空いた、から…」 するとおじさんが僕の体を離すと、ソファへと促してくれる。 「コーンスープなら有るよ。それとロールパンも焼こうか?」 キッチンへ入ったおじさんが、笑いかけてくる。 「うん」 頷くと、おじさんがパンをトースターにセットしてスープを作り始める。 鼻歌でも出そうだ。 そんなおじさんの様子を見つめる。 本当にカッコイイ…。 料理は無理でも顔だけで、朝の情報番組のナントカキッチンというコーナーに出られそうだ。 少しして、おじさんが僕の目の前のローテーブルにホットミルクとコーンスープ、ロールパンの乗ったお皿を並べてくれる。 「いただきます」 「どうぞ。熱いから気をつけて」 「ん」 僕は湯気の立つカップを両手で持ち、フーフーしてから飲んだ。 美味しい…。 インスタントなのになぁ。 不思議だ。 おじさんが、してくれたことや言ってくれた言葉は昔から特別に感じてしまっていた。 それと同じ効果なのかな? 「美味しい」 「良かった」 そう言いながら、おじさんが隣に座る。 それから頬に何度目かのキスをくれた。 「おじさん…」 カップをテーブルに置く。 それから上目で見ると、おじさんが眉間に皺を寄せて鋭い目付きの顔を見せた。 「え。何?」 全然怖くは無いけど。 な、何? 「俺達、恋人同士ってことは忘れてないよね?」 それはモチロン。 僕の人生でこれ程の衝撃的出来事は無かったのだから。 僕はコックリと頷いた。 は、恥ずかしい~! 認めるのって恥ずかしい。 「結斗の事だから寝て起きたら忘れてるんじゃないかって、内心ヒヤヒヤしてたんだよ」 「ま、まさか~。いくら僕でもそこまで物忘れは酷くないよ!」 すると、おじさんが僕の頬を両手で挟み込む。 「よし。なら恋人として当たり前の事を今から言うよ」 恋人として当たり前の事って何だろう? すると、おじさんが真剣な顔でこう言った。 「これからは海里さんって呼ぶこと!」 え。それって、名前で呼べって事? 無理。 今更恥ずかしくて無理です。 思わず視線を泳がしてしまった。 それで僕の考えは読まれてしまったようだ。 おじさんが頬をぎゅ~っと押してくるから、僕の口はタコさんみたいにされてしまう。 「結斗。その可愛い声で俺の名前を呼んでごらん?」 さぁさぁ!と迫られる。 おじさん…真剣過ぎる…。 ※今後、物語りの若干の加筆や修正なども予定しております。その際、ストーリー上での大きな変更等問題はありませんのでご心配なく。 あと、番外編も予定しています。その為本編の進みが多少遅くなるかも? その際はご迷惑をおかけしますが、宜しくお願いします。

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