48 / 131

第48話 親友

心ウキウキしながら、けれどちょっぴり罪悪感も片隅に残しつつ。 「翔、おはよ」 「おう。お前もう大丈夫なのか?今日も休むかと思ったけど…」 側まで行き顔を見上げて挨拶をすると、翔は眉間に皺を寄せて僕を見下ろしてきた。 翔は普通に登校していったので、僕の朝起きてからの様子は知らない。 おじさんに休むように言われたんだけど、いつまでも病気じゃないのに寝込んでいられない。 しかも人様の家でなんて。 僕の気迫が伝わったのか、それならばとおじさんが学校まで送ってきてくれた。 事情を話すと、翔が苦笑する。 「ふっ。相変わらず甘いなぁ、オヤジのやつ」 実の息子を放っておいて、お隣の子どもを可愛がるなんて確かにおかしな話だ。 ごめんね、翔。 「まぁ、元気になって良かったな。無理すんなよ」 そう言いながら頭をくしゃっとされる。 「う、うんっ…分かってる」 翔の大きな掌は、おじさんを連想させてしまい僕は顔を赤くした。 ちょっと動揺したけど、なんとか誤魔化して別れを告げた 「ふーっ。ドキッとした」 僕は足元をフラフラさせながら自分のクラスへと入った。 「おはよ、結くん!」 「おはよう、陽くん」 僕が自分の席へと着くと、直ぐに真壁陽太がやって来た。 陽くんは背格好と性格が僕と似ていて、とっても仲が良い。 僕と違うところといえば、髪は薄茶でちょっとだけ天然パーマがあることと、目がパッチリちょっぴり猫目、運動神経が良いからソフトテニス部に所属していること。 「結くん、体大丈夫?」 前の人の椅子に腰かけて、後ろ向きになった陽くんが、休んでいた僕を心配して顔を覗き込んできた。 「うん、ありがと。もう大丈夫なんだ」 「なら良いけど…」 僕がそう言うと、陽くんがホッとした顔をした。 本当に心配してくれていたんだなぁ~と思うと嬉しくなる。 「…っ」 思わず口に出しそうな言葉をのんだ。 嬉しくて、ついおじさんの事を話しそうになってしまった。 いくら親友の陽くんにも言えないよ。 世の中の学生たちは、友人とコイバナなんてしてるんだよね。 それが出来ないなんて、ちょっと残念だなぁ。 いつか言えたらいいな。 キーンコーンカーンコーン、とチャイムが鳴る。 「あっ、チャイム鳴った。僕、戻るね」 僕が思ったと同時にチャイムが鳴って、陽くんは自分の席へと戻っていった。

ともだちにシェアしよう!