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第52話 楽しいお昼
定食の載ったお盆が置かれた場所は、国見くんの隣。
僕と陽くんが並んで座ったら、挟み込むように反対側に翔が座った。
他のメンバーは向かい側にゾロゾロドカドカと煩く着席した。
う~ん、本当に素敵なメンバーが揃ってる。
揃いも揃って…チャラそうで、悪さしでかしそうだなぁ…なんて、思ったほど怖くも無いんだけどね。
お菓子の差し入れをしているからか、何だかワンコみたいで皆カワイイんだよね!
なんて、慣れてしまった僕はいいんだけど陽くんはというと、目を白黒させていた。
「陽くん、食べよう?」
「えっ、あ、うん!」
動揺しまくりの陽くんは、返事をするや否やご飯に集中することにしたらしい。
震える手でお弁当包みを開けると、早々にパクパク口へと運び出した。
手がブレまくってる…。
何だか可哀想になる。
僕も初めは、そんな感じだったんだよね…まぁ、翔が居たお陰でそこまででも無かったんだけど。
他の皆も食べ始めたら、一気に賑やかになってきた。
元気なんだよね。
食べたり喋ったり、忙しそうだ。
普段ふたりで陽くんとのんびり食べる僕としては、経験の無い賑やかさだ。
目の前の賑やかさとは無縁な隣の国見くんの方へと視線をやると、黙々と食べつつもメンバーの話に相槌をうったり、微笑んでみたりと…。
カッコイイんだけど…本当に…。
何だか視線を外せなくなってしまった。
そのうち、国見くんが気がついて僕に視線を向けた。
「…どうした?」
低くて掠れた様な声にドキリとした。
しかも隣に居るから顔が近いんですけど!
「え~っと、何でも無いよ…」
エヘヘと笑って誤魔化して、箸を動かす。
「ふーん…」
国見くんも再び食べ始めた。
「あっ!」
突然、陽くんが声を上げたので何事かと隣を見る。
他の皆も一斉にそちらを見る。
視線を向けられた陽くんは、恥ずかしさからか、カカーッと顔を一気に赤くした。
分かるよ、その気持ち。
僕だってきっと陽くんの立場ならそうなる。
普段注目される存在じゃないからね!
と、言っても陽くんはちょっとカワイイ顔をしているから僕とは違うかも。
カワイイって言うと、陽くんは怒るんだよね。
「結くんの方がカワイイよ~!」って。
いや、地味な僕がカワイイとか…両親か海里おじさん位なものだと思う。
「あ?どうしたんだよ、うるせぇな」
翔がそう言いながら箸を止める。
そして、迫力あるイケメンチャラ男が苦手な陽くんに正に王道な翔が顔をしかめながら視線を向けた。
「ひ…っ」
「何だよ?どうした」
一歩間違えれば不良な翔に、陽くんが声にならない声を上げた。
「よ、陽くんどうしたの?」
僕が聞くと、漸く陽くんが声を発した。
「す、水筒を忘れてきちゃって…」
急いで来たから教室に忘れて来たようだ。
「あん?なら、ソコの水貰って来ればいいだろ」
それを聞いた翔がガタンッと音を立てて立ち上がった。
「俺も飲むからついでに貰って来てやるよ」
翔が飲んで空になったコップを手にして、水を入れに向かった。
「えっ、あっ、ちょ…!」
陽くんが声にならない声を再び紡ぐと、立ち上がった。
「ぼ、僕も、行ってくるね!」
陽くんは僕にそう言うと、青ざめた顔でアタフタと翔の後を追いかけて行った。
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