58 / 131
第58話 スマホの画像
気持ちを伝えた僕の頭を撫でては、おじさんはチュッと沢山のキスの雨を降らせてくれた。
「んっ…、ふぅ、くすぐったいよ」
僕が首を竦めると、漸くおじさんがキスを止めてくれた。
止めてくれたのは、助かるけど寂しいかも。
複雑な僕の心境を知ってか知らずか、おじさんはもう一度顔を覗き込んでからチュッと軽く唇に。
「ふふっ。俺の恋人は本当にカワイイね」
「おじさん…」
恥ずかしくなって、やっぱり俯いた僕のほっぺたを大きな掌で包み込む。
コツンとおでことおでこが触れあう。
「恥ずかしくなった?そこもカワイイ…」
目を上げると、視線が絡み合う。
「結斗はどこもかしこもカワイイから、本当に困る」
「そ、そんなこと言うのは、おじさんだけだよっ!」
平凡極まりない僕をそんな風に言ってくれるのなんて、海里おじさんしかいないよ。
「ンンッ」
「どの口がそんな事を言ってるんだ」
鼻を摘ままれる。
「これを見てもそう言えるのか?」
そう言って鼻を解放したおじさんは、ゴソゴソとスマホを取り出した。
「これはどういう事だ?」
そして、スマホをこちらち向けてくる。
「あ」
スマホの画面に映し出された画像は、僕と国見くんだった。
周りの様子から、学校の食堂みたいだ。
ということは、今日のお昼ご飯の時のものだよね?
僕と国見くんが顔を近づけて見合っている後ろ姿。
「な、何で?」
何でおじさんがそんな画像を持ってるの?
「何でって、それはどうでもいい。それよりも!この男は誰だ!?」
「ええっ?!この男って…っ」
男?
「と、友達だよ!ご飯を一緒に食べただけだし。あ!翔の友達だからね、聞いてみてよ」
そこで思い至る。
「あぁーっ!!翔だね、その写真撮ったのは~!」
他に思い当たらない。
「それよりも、結斗。恋人同士になって早々に浮気する気かっ!」
え。そんなわけないでしょ?
でも、おじさんの顔は本気の様子で…。
「浮気って、それは絶対にないよ。だって、こ、こ、恋人…は、おじさんだし。それに、おじさんの事…僕、本当に…」
そこまで言ってから再び恥ずかしくなって、顔を赤らめてしまう。
「好きか?」
「す、好きだよ…」
コクリと頷くと、またまたギューッと抱き締められた。
「ウソウソ。信じてるよ。ただ、知らない男と見つめ合ってたり仲良くしてるからさ」
背中を上から下へと撫でられる。
それから体を離され、顔を見つめられる。
「これからは、俺の知らない所で男に気を許さないこと!いいね?!」
し、真剣だ…。
そんな事をするわけないのに。
だいたい初めての恋人がおじさんで、どうしていいか分からなくて、右往左往してる僕なのに。
どうやって浮気するっていうの?
「はぁ~…」
「結斗!!」
思わず溜め息をついた僕に、おじさんの目がキラリと光る。
「はい」
頷く僕に満足そうにする海里おじさんでした。
おじさん…なんだかちょっと、カッコ悪いよ…?
ともだちにシェアしよう!