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第60話 何処か違う気がする
溺れそうになりながらキスを受け止めていた僕は、ハッと我に返った。
ここって外だ!!
「お、おじさんやめて…ッ、ここ外だから!」
僕が顔を背けながら、おじさんを押し返しにかかると、若干ムッとしつつも諦めてくれたのか運転席へと戻ってくれた。
「はぁ~」
安堵の溜め息を吐きつつ窓の外を確認した。
前回のトラウマがあるだけに、誰かに見られていたらと思うと恐ろしくて仕方がない。
「おじさん、もう外でこんなことしないでね!?」
僕は少し口を尖らせてたしなめる。
だけど、おじさんは全く堪えてない。
「いや。やるよ?カーセは一回は経験しないとな」
カーセ…カーセとは?
はてな?が浮かんで首を傾げる。
よく分からないけど、またするのはするらしい。
冗談じゃないよ!
「それにキスしかしてない。大丈夫。誰も見てないよ」
そうは言うけど、前に見知らぬバイクの人に見られた経験がある。
おじさんてば、もう忘れたの?
「とにかく僕はしないからね。外でこんなことして、誰かに見られていたらどうするのッ?」
「見られても別に構わないけどね。俺は結斗を愛してる…だから却って皆に見せびらかしたいくらいだよ」
「見せびらかしたいって、そんな事したら噂になって大変な事になるよっ?」
眉間に皺を寄せて眉を吊り上げて言うけど効果は薄かった。
「大変な事?何?俺の実力でどうとでもしてやる。心配ないよ」
おじさんはそう言って微笑む。
「それにしても結斗は怒っていてもカワイイなぁ」
おじさんが僕の顎に指を添えた。
チュッ。
唇同士が合わさるリップ音が妙に響いて聞こえた。
「~ッ?!」
僕の口がポカンとなる。
いくら言っても通じない?
おじさんって、こんな事言う人だったっけ?
僕は小学生の頃からおじさんと一緒に色々な時間を過ごしてきたけど、今までのおじさんとは何処か違う気がする。
「ん?」
僕があまりにもジッと見つめるからか、おじさんが不思議そうに見つめ返してくる。
恋人になってから、おじさん何だか雰囲気とか違うのは気のせいじゃないと思う。
「あ、何でもないよっ?と、とにかく!今度からはこんな事しないでね」
誤魔化すように僕が言うとクスッと笑いながらおじさんが頷いた。
「了~解」
そう言うと、おじさんは再びアクセルを踏み込むと軽やかなバンドル捌きで駐車場を出た。
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