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第63話 特別番外編『幼馴染み・中編』

う~ん、さすが主婦。他のヤツラとは動きが違う。 俺は可愛いエプロンに三角巾姿の結斗の姿をなんとなく見ていた。 普段どんくさいアイツらしくなく、キラキラとした表情と動き。 見ていて飽きないな~。 子どもの頃は、よく一緒に居たんだけど今は付き合う仲間が違うせいか、学校でも放課後も顔を合わせて過ごすことはない。 今日みたいなやり取りはたまに有るくらいか…。 結斗のやつ、今じゃオヤジと一緒に居る時間が多いもんな。 俺はふと思いついてポケットからスマホを取り出すと、結斗の後ろ姿を撮った。 パシャ すると、璃子の相手をしていたヤツラが飽きたのか、俺の周りに集ってきた。 「ん~?オマエ何撮ってんの」 「好きな女でも居た?」 そんな女いるわけないのを知っていて、茶化してきやがる。 うるせぇな~。 「おっ、これってさっきのヤツじゃね?」 強引にスマホ画面を見られてしまう。 「あぁ、翔の幼馴染みとかいう」 「結斗だっけ?」 あ~マジうぜぇ…。 「おーい、結斗くーん!」 そのうちの一人が結斗を呼ぶと、教室中が視線を此方へと向けてきた。 もちろん結斗も驚きの表情を浮かべていた。 手にはボウル。 よし、これも撮っておこう。 パシャ 「貴方達、次の授業が始まったわよ!部屋に戻りなさい」 家庭科の教師が声を上げた。 これ以上居座って結斗にとばっちりが行っても可哀想なので素直に部屋に戻るかな。 俺、一応これでも優しい男なんだよね。 仕方ないから伝達だけしとくかな。 「おいっ、結斗~。それ出来たら俺の所へ持ってこいよ!」 「か、翔!?」 突然現れて声を掛けられた結斗は、恥ずかしくなったのか、顔を赤くした。 その顔もおもしれぇから、撮っておこう。 パシャ 結斗の照れた様子が上手く写った。 オヤジのプレゼントしたエプロンが妙にしっくり来ている。 どこからどう見ても男なんだけどな…何でだろうなぁ? 俺は首を傾げながら部屋を出た。 廊下を歩きながらオヤジへメッセージを送る。 《オヤジに優しい息子からのプレゼント》 それに今撮ったばかりの結斗のエプロン姿を送ってやる。 プレゼントしたエプロンを着てくれていると知ったら喜ぶに違いないだろう。 キモいほど喜ぶ気がする…。

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