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第3話

××× コインロッカーに預けていた荷物を回収し、目的のホテルに向かう。 「おぉ、凄ぇ!」 路地裏の坂を上った先に、想像より遙かに大きいグランドホテルが目の前に現れる。 それに圧倒され、見上げる一行。その中の夏生が、素直な感情を漏らす。 白い建物を下から照らす、眩いスポットライト。煌びやかな装飾灯。|コンクリート《地面》に埋め込まれたライトが、ゆっくりと七色に光って幻想的な雰囲気を演出していた。 「……で。部屋割りはどうする?」 フロントで無事チェックインを済ませた夏生が、ロビーで|待機している《寛ぐ》一行に尋ねる。 「バカなっち! そんなん決まってんじゃん。 私とモエモエは、当然同室!」 そう言って、那月が萌の肩に腕を回す。 「あー、だよなっ。……じゃあ、残りは……」 ソファで寛ぐ面々を確認する夏生の視線が、僕の所で止まる。 ……え…… 何かの合図? よく解らないまま、夏生の真意を読み取ろうとじっと見つめていれば、僅かに緊張した面持ちに変わり、スッと視線を逸らした夏生が口を開く。 「俺と、さく──」 「ここは公平に、クジ引きにしない?」 夏生の声を遮り、スッと立ち上がった佐倉が至極冷静な声で場を仕切る。 それまで我関与せずな態度を取り、中々輪の中に混じらなかった佐倉の提案に、すかさず手を挙げた那月が「賛成!」と元気な声を上げた。 「……せーの!」 那月が即席で作った割り箸くじ。先端部分を手のひらで隠し持ち、那月の合図で一斉に引く。 割り箸の先にあるのは、サインペンで書かれたハートか星形のマーク。 祈る気持ちで竜一と照らし合わせるものの、竜一がハート、僕は星と違っていた。 「……チッ」 小さく舌打ちした竜一が、不貞腐れたように顔を背けながら割り箸を押しつける。 「……」 そんなの、僕だって悔しいよ。 もし竜一との関係がオープンだったとしたら、無条件で同室になれたかもしれないのに…… そんなありもしない想像を膨らませながら顔を上げれば、割り箸の先を見せ合う夏生と佐倉の姿が目に映る。 「さくらは?」 僕の視線に気付いた夏生が笑顔で近寄り、割り箸の先を見せる。慌てて僕も割り箸の先を夏生に見せれば、視界の端から星マークの付いた割り箸がスッと現れる。 「工藤と、一緒か……」

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