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第6話
──え……
それって、どういうこと……?
どう受け止めていいのか解らず、膝を曲げて横になったまま、近付いてくる佐倉をじっと見つめた。
「……」
ただの、冗談だよね。
それとも僕のこと、揶揄ってる?
無表情の顔からは、心の内など読み取れる筈もなく。どう反応すれば良いのかも解らない。
こんな時、どうしたらいい?
何て返すのが正解?
もし夏生や那月だったら、どうやってこの場を切り抜ける?
頭の中がぐるぐるとし、上手く答えを導き出せない。
困惑したまま口の両端を持ち上げ、佐倉に作り笑顔を見せる。
「……!!」
ギシッ、
ベッドを軋ませ、両手を付く佐倉。そのまま片膝も付いて上がると、横たわる僕の足下からゆっくりと近付く。
驚いて、上体を起こす。
と、それを許さないと佐倉の長い腕が伸び、僕の肩を掴んでベッドに押し倒す。
「………やっぱり、可愛い」
サラッと流れ落ちる前髪。そこから覗く、切れ長の綺麗な眼。
少しだけ茶色掛かったその瞳が、僕を捉えて離さない。
「……え……」
僅かに開いた口から、声が漏れる。
一瞬、何が起きたのか解らなくて。
佐倉が僕の腰上に膝立ちで跨がり、肩を押さえ付けて見下ろしていると脳が理解するまでに時間が掛かってしまった。
「……な、にす……」
バクバクと、暴れる心臓。
幾ら僕を揶揄うにしても、冗談が過ぎる。
逃れようとして、佐倉の肩を押し返す。が、赤子の手を捻るかのように、簡単に手首を掴まれ、ベッドに縫い付けられる。
「……ゃ、め……」
まだ自由な方の手で、佐倉の脇腹辺りをグーで叩く。が、またもや簡単に手首を掴まれ、顔の横に押し付けられる。
抵抗しようと腕に力を入れるのに、全然びくともしない。
「……」
僕の顔を覗き込む佐倉。
その無表情でミステリアスな瞳が、僕を捉えたままゆっくりと近付く。
僕の顔に掛かる、佐倉の影。垂れ下がる前髪の毛先が僕の額に触れ、鼻先三寸の距離で止まる。
「……佐……」
スッと寄せられる唇。
開きかけた僕の唇に、その薄い唇が強く押し当てられ、否応なく熱を与えられる。
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