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第7話
クチュ……
唇を割り、歯列を無理矢理こじ開け、咥内へと生暖かい舌が侵入する。
頬裏。顎裏。歯列の裏。──濡れそぼつその先端が、僕の唾液を巻き取りながら汚していく。
……だめ……
これは、竜一のものなのに……
そう願っても、逃れられない。
助けなんか、来る筈がない。
絶望に打ちひしがれながらも、それでも抵抗しようとするのに。僕の両手は握りこぶしを作るだけで……びくともしない。
「……ん、」
ちゅく、ちゅ……
鼓膜に響く、厭らしい水音。
逃げ惑う僕の舌を追いかけ、佐倉の舌が絡みつく。
その度に抉られていく精神 。
苦しい。
諦めたくない。
だけど……もう、諦めるしかなくて。
抵抗していた両腕から力が抜け落ち、閉じた瞼の隙間から、絶望の涙が滲む。
……はぁ、はぁ、
ゆっくりと、唇が離れていく。
鼻先に掛かる、佐倉の吐息。
佐倉の唾液に塗れた咥内。
やっと……解放されたのに。今更になって恐怖が襲い、身体が小刻みに震える。
ゆっくりと瞼を持ち上げれば、鼻先三寸の距離で佐倉の双眸と目が合う。
「……!!」
……や、やだ……!
声に出して、そう叫びたいのに。
何の感情も映さず、ただ僕を静かに見下ろす二つの眼が……怖くて。
涙で濡れた睫毛を僅かに下ろし、佐倉から目を逸らす。
その刹那、僕の手首を掴む手に力が籠もり、佐倉の唇が再び迫る。
「……ゃ、」
顔を横に向け、キスから逃れようとする。
と──左手首を離した佐倉の手が僕の顎下に差し込まれ、頬を掴みながらグイッと正面に戻される。
その力は強く、僕の意思を無視し、そこから動くのを決して許さない。
それに抵抗し、足をバタつかせながら身体を捩ると、自由になった左腕を伸ばして佐倉の二の腕を掴む。
「……んっ、」
それでも──佐倉の唇が迫り、強引に僕の口を塞ぐ。
くちゅ、ちゅる……
重ねられた後、直ぐに侵入する舌。
抵抗する腕を簡単に外され、掴まれた手首を定位置に戻される。
そして佐倉の身体が僕の上に覆い被さり、下半身を押しつけてきて──
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